老後とは60歳まで?
 「老後の生活費のことは考えているつもりだ」と、豪語するのはSメーカーの子会社に勤務する年収700万円、小太りの52歳の野中信之さん。90歳の母親の足が日増しに悪くなり老いていく姿を見ているから、ちゃんと老後のことは考えているという。
 「毎月2万円ずつ60歳まで払い続ける『拠出型企業年金保険』に加入しているから、60歳から毎月15万6000円ずつもらえるんだよ。今の生活費は毎月約30万円。足りない分は5歳年上の妻の年金とあわせて生活する。十分暮らせるよ」
 自信たっぷりに答える。
 しかし、受け取り方を詳しく聞いてみると「10年確定年金コース」である。ということは、毎月約15万6000円が支払われるのは70歳まで。それ以上生きた場合は受け取り金額はゼロなのである。
 70歳以上生きたらどうするの?
 「そんなに長生きしないよ」と明るく笑いながら言い放つ野中さんに落ち度があるとすれば、受け取るコースの選択ミス。生きている限りもらえる「終身年金」で一生保証されるコースに設定するべきだったのだ。
 しかし毎月の受け取り金額は約半分に減る。約30万円の現在の生活レベルを落としたくないということにこだわった野中さんは、70歳までしか生きないと、言い聞かせるように自分の寿命を勝手に決めてしまったのだ。
 退職金はいくらかと聞いてみると、「今度、退職する上司の退職金は1100万円だけど、僕たちが退職するときにはそれだけもらえないかも」
 しだいにか細い声になっている。
 70歳からの生活費は退職金に頼ることになるだろうに。仮に退職金が1000万円だとしたら約3年間で生活費がなくなることになる。企業年金だけに依存しているわけではないだろうが、妻の年金などその他の収入も早く計算したほうがよさそうだ。
 
こづかい帳
 野中さんのお小遣いは、4万円、少ないからしっかり運用しているとか。
 そのワザは、株主優待券で小銭を稼ぐこと。
 スターバックス株を1株、約3万3000円で購入。無料ドリンク券2枚は最も高い『アイスキャラメルマキアート』(ベンティーサイズ)490円)にトッピングの生クリームを50円分を無料で注文する。
 まだ自分で使うからいい。
 カゴメの株の場合は、100株、約12万円を購入し約1000円の配当金をもらう。さらに、株主優待券は、野菜ジュースなど1000円相当分を一個ずつランチ時間に部下に売る。そうすると1200円くらいになるのだそうだ。
 少額投資でも株主優待券で得できるといういい例である。でも、今、節約できるなら、きっと老後の生活水準を下げることもできるかも。
野中さんのこづかい帳

月額     4万円
  ランチ代 650円X25日 1万6520円
庄や(飲み代) 3900円X5 1万9500円
  コーヒー代 株主優待券 無料
  自販機缶コーヒー 120円X10 1200円
タクシー代   660円
  小計   3万7880円
収支     2120円