海外滞在の夢
 「今まで働きづめだったから、海外でゆっくりしたい」
 62歳の斉藤勝彦さんは定年を迎えても、編集プロダクションの会社に残った。
 アルバイト待遇だけど「腰が低くて使いやすいし仕事ができるから」と10歳以上も年下の部長に頼りにされている。
 「仕事の出来ない40歳の社員のクビを切ったため僕に3倍の仕事が回ってきたんだよ。おかげで給料は3分の1に減ったのに、仕事は前より忙しくなって深夜帰りだよ」
 年収780万円の年収に戻して欲しいという斉藤さん。
 「会社は俺が定年後だからって安く使っているんだ」とやり方がずるいと不満を漏らす。
 夢は、5年以内に海外に住むことだそうだ。日本にいる限りは働かない人が悪いみたいな習慣があるからなんか社会からはずされた人みたいな悲しい気分になるという。
 斉藤さんは奥さんに早く先立たれた。
 「妻がいないからだれも金のことうるさくいう奴がいなくて貯めることを知らなかった。マンション購入や株式投資なんてまったく興味もなかった。貯金もほとんどない。ただいわれるがままに保険をかけていただけ」
 保険は入院と死亡のためにかけているけどよくわからないと、自分のことなのに無頓着。
 奥さんへの保険もちゃんと加入してなかったから数百万円しかおりなかった。
 「タイの女性が家に遊びにおいでといってくれている。一定の年金をもらえるから『リタイアメントビザ』が取得できる。300万円程度を現地の銀行に入金すればいいし、物価も安いから優雅に過ごせると思うなあ」
 今は、仕事が忙しくて気が紛れているけど、いつか仕事がなくなれば寂しくなる。そして一人ぼっちで年金だけでの生活は日本では貧乏くさい。それに金がなければ女もよってこないとぼやく。それより物価の安い国ならまだチヤホヤされるはずだと鼻息荒くする。
 転職5回目で入社したこの会社からは年金は300万円しかもらえなかった。会社からの退職金と年金は全てタイでの生活費にあてたいという。
 日本でカネがなくて惨めな生活するよりはクラブで知り合ったタイ人女性と裕福に過ごしたいという。
 ただ海外でのビザの取得に関してはコロコロ変わるため事前に何度も確認が必要だ。
舞台俳優が夢
 週に2回は劇場でミュージカルなどを鑑賞した後、仲間と飲む。チケットは3000円程だけど飲み代を入れると毎月3万円は使ってしまう。
 後輩が頑張っているのをみると刺激になるという。
 「会社には内緒だけど、バブルのときは声優のアルバイトしていた。そのギャラは毎月100万円ほど、給料の3倍も稼いでた時期もあったね。周りにご馳走してたから残っていないよ」
 声優ではなくてこれから舞台俳優になりたいという斉藤さんは、三味線を習い始めたそうだ。
 物価の安いタイに住むことになったら、そこで日本の文化をとりいれながら舞台俳優してみたいなあと夢を語った。
 それなら日本よりも自己満足的な夢がかなえられそうだ。
俳優になりたい斎藤さんの小遣い帳

     
  月額 44,000
ランチ代 12,000
チケット代 30,000
  (食事代含)  
  その他 2,000
  小計 44,000