「金銭感覚は女の命」
 国際線のフライトアテンダントとして、世界15カ国の客室乗務員とともに香港を基点に世界中をフライトすることになった私は、20代前半でありがたさも解かることなく5ツ星ホテルに宿泊しながら世界中の料理を食べ歩いていました。
 フライト先では、ホテルにチェックインすると同時にフロント係の人から封筒に入った現金をもらいます。その現金は現地の貨幣、フライト手当てとしてです。
 日当はフライト先によってもらう金額が違います。
 例えば物価の安いインドにフライトすれば手当ては一日当たり約3500円で、物価の高いイギリスなら約1万4000円。ちなみに東京の場合は約1万2000円です。
 朝食、昼食、夕食、それにおやつ分というのが目安です。東京なら朝食に1500円、ランチに1500円、夕食に6000円、それに残りの金額がお菓子分という考えです。
 ということは、為替レートによってもらう金額が変わることもあるのです。
 例えば先月、オーストラリアにフライトすれば1オーストラリアドルが75円が85円になっていたりと、その時期が一ヶ月ずれただけで、為替レートによってもらう金額も変わるので。
 しかし、たかが22歳のその頃の私は、今の為替レートなら日本円に換算するといくらになるのか? などということよりも、おもちゃのような外国のおカネを手にして始めての国を歩き現地だけでしか食べられない料理と日本よりも安いブランドばかりに目がいったのです。
 パリに買い物に行けば、頼まれたブランド品を購入するだけで一日が終わっていました。物欲に負けてさまざまな新商品が夢にまで出てきました。そしていつの間にか私の住んでいた香港の60万円近くもする3LDKのマンションのひと部屋は、ブランドの山積りになってしまいました。クレジットカードの請求書も貯まってきました。
 香港のマンションの賃貸の値段は東京よりも高くワンルームがほとんどないため、3人の客室乗務員でシェアをしていました。ところがシェアメイトと喧嘩したり、急に退社するなど、引越をよぎなくされることになります。香港での引越費用は高く、借金がさらに膨れあがることになりました。
 働いても働いても数ヵ月先のお給料が借金に消えるなんて・・そんな金銭感覚の狂った私と対象的だったのは10年前に経済成長前の香港のマンションを購入し10倍に資産が増えエステサロンを経営していた先輩でした。
 それからというもの女性の幸せは「金銭感覚をつけることから始まる」と、私は必死で節約を心がることになりました。
 フライトスケジュールは前月の末から当月初めにかけて決まるため、来月どこに飛ぶのかわからない状態。あてにできないフライト手当から来月の収入を計算することもできません。支出はいくらなのか、支出をなるべく抑えられないのか、そればかりを考えていました。電気代や水道代は基本料金に押さえ腐らせてしまっていた食料品の買い物は市場で値切りながら最低限の量に抑えました。
 必死の節約のかいあって私はボーナスなど数百万を頭金に24歳でマンションを購入、マンション経営を始めることになりました。
 しだいに家賃収入とローンの返済とお金の流れがわかるようになりました。
 そして発展している中国経済を目の当たりにして中国ビジネスにかかわりたいと考えすぐに少額から試せる中国株の投資を始めることになったのです。