50歳前半と後半は大きな年収の差
 「50代前半と後半の再就職はまったく違う。後半になると年収は半分になる。仕事に対する考え方や意気込みもまったく違うよ」
 大手人材派遣会社によると、同じ再就職をするにしても50代前半の平均年収は約400万円から600万円、後半にさしかかると約300万円から500万円に減るという。
 50代前半はまだやる気マンマンだけどもう60代が近くなると責任のある仕事はしたくない。楽しみながらゆっくりと家から遠くない会社で働きたいという人が増えるそうだ。
 特に大手企業を退社後、再就職を探す人の現状は想像以上に厳しかった。
 「会社にしがみついていれば部長という役職のままだった。だけど早く辞めたほうが再就職には有利。55歳を超えて探している人はアルバイトかボランティア程度のものしかないそうだ。俺は70歳まで働くからそのほうがいい。目の前の数年はだけ辛抱すればいいのだから」
 そうやって退職金1200万円と上乗せ金の2年分の年収約1800万円をもらって退職したN運送会社の営業職の久保正樹さん(52歳)は、人材派遣会社に足を運んでもう半年が過ぎた。
 「上乗せ金は50歳がピラミッドのピーク、もっとも多くもらえる。実はほぼ内定をもらっていた会社があった。だから前の会社に退職届を出した。だけどその後やっぱり内定取り消された。退職届を出したのを撤回するわけにいかないし、それに会社もひきとめなかったんだ」
 いつまで働くのか自分の中の定年を70歳と定めた久保さんは苦笑い。子どもはまだ大学生、なんとか次の仕事を早くみつけたい。
 「俺はまた別の業界でもうひとはな咲かせたい」
 現実と夢の葛藤がもっとも高いのも50代の前半なのだそうだ。
 「営業職だったから、どんな産業でも同じだと思っている。今度は船会社なんかどうかな? 証券会社で営業もやってみたい」
 久保さんの夢は続く。
久保さんの小遣い
 もっとも楽しいことはマージャン。いまでも深夜遅くまでマージャンをしているそうだ。
 体力もありそうだ。がたいのいい体でタバコをすぱすぱ。声も必要以上にでかくて、猪突猛進型でストレートなタイプだ。
 「30代は本当に徹マンしてたなあ。一晩で30万円も失ったときもあったけどなあ」
 笑いながらバリバリ働いていたときのことを思い出している。
 定年前、仕事を探している多くの人は、とっても自信を失っているそうだ。
 そんなときには、もっとも仕事がうまくいっていたときを思い出してイメージコントロールをしながら次の面接に向かうのがいいそうだ。
 「いや~。営業のプロだからね。あの俺の部署は俺で大きくなったようなもの。夜は銀座のクラブにいって30万円、それでもまだ元気、帰りたくない。だ空女の子連れて神田の雀荘にタクシーで移動して朝まで遊んでたときもあったなあ」
 久保さんの場合は、早く現実を受け入れることから始めたほうがよさそうだ。
マージャンが大好きな久保さんの小遣い帳

収支 月額 45,000
食事代 15,500
マージャン 11,000
ランチ代 17,000
その他 1,500
小計 45,000