中国の代表的なスポーツとは太極拳
 私が北京に住んでいた7年ほど前は、近くの小さな公園に、毎朝五時ごろにはどこからともなく人民服のような地味な服を着たお年寄りたちが小鳥かごを持ちながら集まってきました。顔中、シワだらけ、苦労を書って生きているような姿です。どうみても70歳は超えている腰の曲がった老人たちは軽く挨拶を交わしたかと思うと、すぐに丸く輪を描くようにたんたんと太極拳を始めるのです。
 最近、上海の観光スポットのひとつでもある浦東区に行って見ると、昔と違って赤や青のトレーナーを着た若若しい姿で流行をおいかけるように太極拳をしている姿をみかけました。
 なるほど、書店でもヨガの次に太極拳のムック本は数多く並べられています。
 30代の世代では、小中学校の体育で習ったスポーツといえば、ほとんどが太極拳ばかりだったそうです。最近になってサッカーやバレーボール、バスケットボールなどを習うようになりましたが、共産主義の中国では太極拳はとても尊敬されていたスポーツだったのです。
 そもそも太極拳とは、今のような健康を意識したやわらかな動きではなく、戦乱の時代に戦うため、自衛するための動きをしていました。
 江戸時代の初め、中国では明が滅亡する前に、陳王廷氏が弟子たちに武術を教えたのが始まりです。明や清の時代には地方ごとに軍隊が組織されていたためその村ごとに独自の武術が発達したのです。陳王廷の場合は出身地の河南省で教えていました。
 その後、400年にわたり改良され、現在は陳家溝の陳小旺氏や陳正雷氏、王西安氏、朱天才の4傑を筆頭に受け継がれています。
 その後、1949年に中華共和国が成立し、56年に簡化太極拳と57年には88式太極拳が中華人民体育運動委員会などによって制定されたのですが文化革命の間は封印されていました。それでも1979年には48式太極拳が中華全国体育総工会、中国武術協会などで制定され、アジア大会などでも武術の競技などとしても披露されました。
 このように中国人たちの間では太極拳に対しては考え深いものがあり重要なスポーツと位置づけられているのです。
 日本では1972年の日中国交から伝わり始めましたが、ハードに動き回らなくてもいいためブームになったこともありましたね。私も健康のために末永く続けてみたいです。