スポーツ選手が看板に
 ショッキングピンクやブルー、黄色の3色でまとめられた背景の色は、中国らしくない今風のアレンジです。
 いっけん、ぱっとみたら団扇のようなものが転がっているだけに見えますが、よく見ると、そこには、オリンピック選手たちの写真が、丸や四角の形におしゃれに切り抜かれていました。
 この看板は、北京の体育大学の正門から入って右に曲がったところにで~んと立っています。
 白の装備品をつけている男子フェンシング黄耀江(ファンヤオジャン)選手は、上半身アップの写真と試合中の写真と2枚もかかげられています。
 アテネ五輪でダブルスとシングルともに金メダルを取った卓球の選手、張怡寧(チャン・イニン)は、豪華に手を広げてちょうど玉を打ち返している写真です。
 アテネ五輪100m平泳ぎの女王、有名な美人スイマー・羅雪娟(ラ・セツエン)は、ちょうど泳いでいる写真です。
 学生たちに、「いつか金メダルを取ればこんな風に英雄になれる」とでもいわんばかりに選手の写真はこの看板だけでなく、体育館の中の壁にも額縁に入れられて飾られていました。
 それも、特殊な技術を使って写真にぼかしをいれています。まるで俳優のポラロイド写真のようです。選手への憧れを増すための手法なのでしょう。
 しかし、一人っ子政策によって甘やかされている現代の子どもたちの間では、「オリンピック選手になりたい」といった選手への憧れはなくなりつつあります。
 現在のオリンピック選手は、地方の裕福でない出身者がほとんどですが、今後、いずれ中国で地方まで所得が増加し貧富の差がなくなるでしょう。
 そうなれば、ますますオリンピック選手に憧れる子供は減少するとみられます。
 北京オリンピックでは、金メダル獲得数がアメリカを抜いて1位になることが期待されています。
 ところが、その後は次の世代の選手が育つかどうか不安です。
 看板や写真だけでなく、子どもたちにもっと「選手への憧れ」を強く抱いてもらうために国が新たな戦略に取り組むことが必要かもしれませんね。
 中国の経済成長は北京オリンピックまでといわれているように、オリンピックでの活躍も北京までといわれないように長期的な選手の成長も見守りたいものです。