伝統の踊りの移り変わり
 日本ではちょっとしたダンスブームですね。
 私も社交ダンスを習っていますが、体が硬いためか、なかなか上達しません。
 中国に住んでいるときに雑技などの踊りを習っておけばよかったと反省しています。
 ひと言で踊りといっても中国では中国のサーカス=「雑技」と、新しく導入された「舞踊」があります。
 もっとも私が北京でみた雑技団は、あまりに貧弱で、とても体験してみたいという気持ちになれませんでした。地方から集団で訪れた雑技団の子どもたちが、あどけないお化粧をして楽しくなさそうに皿を回しながら踊っていたのを覚えています。
 「これが中国の雑技なのか、少女たちは、ただ生活のために無理矢理出稼ぎにきているだけなのか」
 と物悲しく感じたものです。
 一人あたりの日給は20元(約300円)ほどだそうです。
 ところが、日本に訪問している中国の人たちの踊りは違いました。
 千葉市国際交流フェスティバルで司会兼通訳を担当したときの天津歌舞劇院は、踊っている少女たちと楽器をひいている中高年の人たちが一丸となっていました。中国で観たものとは違い斬新なものでした。
 そもそも雑技の歴史は古く、4千年以上も前から受け継がれています。その技は、中国の伝統の芸術として受け継がれてきて、日本には、1000年以上前に百戯として紹介されたといわれています。
 雑技の種類には、技芸、奇術、曲芸、幻術などがあり、柔らかい体を使って踊る「柔術」は、雑技のもっとも大きな華です。両手を使って棒の上で何枚もの皿を回す「皿回し」などです。
 そして民族舞踊と古典舞踊が登場しました。
 中国には50以上の少数民族がありますが、それぞれの民族舞踊があり、漢民族だけでも1万4000種類の踊りがあります。
 華やかで迫力のある雑技と違い、舞踊は、大人の美しい女性が、伝統的な調べに合わせて踊ります。
 世界的にも有名なのが「飛天舞女」です。
 シルクロードにある敦煌壁画の飛天舞女の絵を見た唐の時代の人々が、空を舞う天女の踊りを想像して、始めた舞踊だそうです。10メートル以上もある羽衣を巧みに動かしながら天女のように踊る姿は、私には新体操のようにみえます。
 「雑技として全国を回った後、30代になったら舞踊に転身したい」
 ハードな雑技から優雅な舞踊に移行する人も多いようです。
 雑技も舞踊も伝統的な踊りとして、日本では1時間一人あたり約12万円もします。
 しかし、経済成長を続ける中国では、伝統を大事にして雑技を習いたいという子どもは減り、バレエなどのモダンな競技を習いたいという子どもが増えています。
 急激に変化している中国ですが、せっかくの美しい伝統技は受け継いで欲しいものですね。