北京五輪での中国の男子体操の実力
 中国のエンターティメントといえばまず一番に雑技団が思い出されます。大きな会館だけでなく学校の体育館や、ありとあらゆるところでさまざまな雑技団による舞踊が披露されています。
 だからでしょうか。10代の若い中国人は全員が体がやわらかいのではないかと錯覚に陥ってしまうほどです。
 そんな雑技などを多少経験した人が、次にめざすのが体操です。
 体操は「ゆか」「あん馬」「つり輪」「跳馬」「平行棒」「鉄棒」の6種目の総合点で競われます。
 決してスポーツ環境が整っているとは限らない中国で、子どもの頃から唯一身近に感じられたのが体操です。
 中国体操は男子・女子ともに、世界一の強さを誇っています。メダルの数は第二位の日本の6個より2個多い8個です。
 もっとも、中国は金メダルが6位、日本は2個と、その差は歴然としています。
 中国が圧倒的に強く見える体操ですが、もともと最初から強かったわけではありません。
 中国のエース、世界選手権男子個人総合王者である楊威は、1980年2月8日生まれの27歳。中国ではオールラウンダーのエースとしてもっとも期待されている一人です。
 今月行われたドーハ・アジア大会で世界の大舞台に戻ってきた楊威は、プレッシャーとの戦いの中で演技得点の差で冨田洋之に勝ちました。
 ところが楊威は簡単に勝てたわけではありません。
 1999年中国国内ではトップに立ったものの、その年の世界選手権では、たいした成績ではありませんでした。
 なんとか団体では優勝したものの個人タイトルは鉄棒で3位に入っただけでした。
 そこで悔しい思いをした楊威は、必死に努力しました。練習に練習を重ねて、翌年の2000年シドニーオリンピックで、なんと個人総合で2位まで上りつめたのです。
 それからは2001年全中国運動会で個人総合チャンピオンに輝き、また、翌年の2002年全中国選手権でも個人総合チャンピオンとなりました。また、同年の環太平洋選手権では個人3位となりました。
 しだいに自分の実力を発揮、順調にいきつつあるときに、最高の期待を背負ったアテネオリンピックがきました。
 ところが、世界を舞台に再び転落してしまうのです。
 中国人選手では、黄旭、李小鵬、滕海浜がメダルを獲得したというのに、6位に入るのがやっとでした。団体総合でもメダルをのがしています。日本の冨田洋之は4位、同じくメダルを落しています。次の大会で2人がどう成長しているか、二転三転する体操競技の行方が楽しみです。