スポーツ選手に教育される共産党員としての教え
 個人ベースで中国人と付き合っていると、つい忘れてしまいますが、中国はまだ共産主義国です。
 これは、もっとも大事なことで、国有企業が多く共産党員が大多数を占めている共産主義国なのです。
 そして共産党員であるかどうかで、子どもの就職活動から出世できるかどうかにいたるまですべてのことにかかわっているのです。
 数年前まで、北京の学生たちによる就職先の人気企業のランキングには、IT関連などの民間企業ばかりが入っていました。国有企業へ就職を希望する人は激減しました。
 ところが最近は、また共産党のつながりの深い国有企業に就職を希望する人が増えたのです。
 やはり中国では実力だけでは生き残れない。コネクションが大事であり、その権力はいまだ共産党員が握っていることを実感しだしたのです。
 多くの学生は、いったん国有企業で大企業である銀行や石油関連会社などに三年ほど勤務してコネクションをつくってから、民間の企業に転職したいというふうに変化しています。
 中国共産党員は中国社会の中でエリートで、行政、立法、司法、軍、組織など、すべての社会の中のあらゆる部門で力をはぶらせています。
 むろん、その勢いはスポーツ業界でも同じです。
 プロのスポーツ選手として子どものころに目をつけられた選手たちは、学費も寮生活も無料になる代わりに、共産党員になるわけです。これは、一生国のためにつくすことを誓うのと同じです。
 体育大学のキャンパスの中には堂々と共産党員としての教えがとうとうと書かれた真っ赤な看板がありました。
 かつて私が中国の大学に通っていた頃、校則に違反した人は正門の看板に「恥を知れ」といわんばかりに、名前を書かれ張り出されていたものです。
 ただでさえ規則の厳しい全寮制の大学で、体育大学は、さらに共産党員としての指導も忘れてはいません。
 キャンパスの中を歩いていると、いかにも共産党らしく、写真のように赤色の看板に目標が書かれていました。
 わざわざ胡錦涛の名前で学生、つまり共産党員にいろいろと教育活動を掲げているのです。
 高い目標にむかって努力すること、高い教育レベル維持することなどです。
 しかし、経済が成長し改革が進む中で党員による悪あがきは増えるばかりです。腐敗も深刻化しています。
 北京オリンピックで一流の選手が育ったころには、こういった腐敗問題でスポーツ産業が堕落しないことを強く願います。