モラルなき輸入が続く限り、メタミドホス騒動は繰り返す
 メタミドホスが次々に発見されている。それも、製造元は“日本企業”である。2月19日、中国山東省にある「山東仁木食品」が製造した冷凍ニラ肉まんからメタミドホスが検出された。さらに翌日には同じグループ会社の「清清仁木食品」からメタミドホスと同様に毒性の強い有機リン系農薬「ホレート」入りの冷凍カツが見つかっている。「山東仁木食品」「清清仁木食品」ともに、中国資本の企業ではない。両社とも、日本企業のニッキーフーズが100%出資するグループ会社で、れっきとした日系企業だ。輸入元は同じグループのニッキートレーディングである。驚くことに、このニッキーグループはすでに過去に問題を引き起こしている。2002年に発覚した、ミスタードーナツの肉まんに無認可添加物TBHQが入っていた事件を覚えているだろうか? 「山東仁木食品」はあの肉まんの製造元である。肉まん事件も今回同様、ニッキートレーディングが輸入元であった。

 

反省のない企業の認識が混入問題を招いた
 ミスタードーナツ肉まん事件を時系列で振り返ろう。2000年12月、ミスタードーナツは無認可の酸化防止剤が混入した肉まんの全国販売を始める。ミスタードーナツを運営するダスキンの担当役員らは、食品衛生法で使用が認められていない酸化防止剤が混入していることを認識していながら口止め料を払い、その後も肉まんの販売を継続していた。2001年に外部納入業者からの通報があったが、ダスキンは2002年の厚生労働省立ち入り検査まで公表しなかった。結局、2002年に旧役員は総退陣し、2003年からは国内での製造に切り替えて販売を再開していることになっている。
 隠蔽問題が社会的問題になり、旧経営陣に対して106億円の損害賠償を求める株主代表訴訟が起こされた。今月13日、旧経営陣ら13人に総額53億円の支払いを命じた2審高裁判決が、双方の上告棄却により確定したばかりである。そんな中、ダスキンとモスバーガー(モスフードサービス)との資本提携が結ばれた。この事件はダスキン内部の隠蔽問題に集中し、肝心な製造元については大きく問題視されなかった。だからなのか、「山東仁木食品」は、2006年のFOODエキスポJAPANで堂々と出展している。ちなみに農水省は現在も「山東仁木食品」を、家畜伝染病予防法施行規則第43条の施設にしたままだ。
 ここで2つのことが言える。
 1)山東仁木食品は過去に食品衛生法で使用が認められていない酸化防止剤を肉まんに使用していたが、今回、新たに問題になっているメタミドホスが検出された。ニッキーフーズは子会社の管理体制の改善を怠っていたのか。
 2)ミスタードーナツ事件では隠蔽して販売を続けて問題になったが、今回も同様の疑いがニッキーフーズグループと山東仁木食品の関係に向けられかねない可能性も出てくる。

 

中国では農薬なしで野菜は作れない
 今回の山東仁木食品の事件について、厚生労働省はメタミドホスが検出された値がそれほど高くないことから、残留農薬の可能性が高いとコメントしている。最近、中国産食品から、相次いで毒物や無認可農薬が検出されている。メタミドホスなど毒性の強い農薬入り食品は、これからも数年間は見つかり続けると考える。
 その理由は以下の通りである。
 1)中国では07年1月に全面禁止される前まで、メタミドホスを使っていた。広大な中国では、地方の農家にまで農薬規制が浸透するには時間がかかる。よって、メタミドホスなどの無認可農薬が、今でも裏ルートで販売されている。当局の規制管理体制も徹底されていない。
 2)現在は使用禁止となっていても、数年前作られた冷凍食品の在庫が中国や日本には残っている。また、日本側もすでに輸入されて在庫になっている品物すべてを開封して検査するには膨大な時間と金が必要とされる。
 3)中国では、農薬なしでは野菜は作れない事情がある。中国は急速な近代化が進み、工場からの廃棄物によって川と土が汚染されている。また中国には広大な土地があるが、急激に偏った建設を促進したため水不足により砂漠化が進んでいる。夏は40度、冬はマイナス15度になる厳しい天候の中で、農薬使用が先進国並みに減るには、あと10年はかかると言われる。
 また、食品会社側の問題もある。人民元切り上げ、原油高、天災にともなう原材料の値上げなどで、食品業界は利益が出ない現状に陥っていた。ここにも、製品管理が低下する原因がある。今後、偽造問題や残留農薬問題により、日本の消費者から、さらに厳しい眼が向けられることになる。特に日本は外国に比べ食品の安全基準が厳しい国である。厳しいだけでなく、消費者は過敏にもなっている。少しのクレームでも、マスコミで火がつきやすい状態にある。中国食品に関するトラブルは、企業の輸入姿勢と、中国の農薬事情が変わらない限り、しばらくは続いていくだろう。