中国社会の現状と将来は、中国の大学生の就職希望先から読み取ることができる。チベット問題の後、愛国心を訴えたデモ隊が、今度は北京五輪前後に民営化デモに変わるのでは?と注視されている中、意外なアンケート結果が発表された。
中国の教育部大学生就業指導センター直属の就職雑誌『中国大学生就業』が大学4年生を対象としたアンケートによると、就職希望先は民間企業ではなく、国営企業が人気となった。2カ月間で1万7251件の有効回答を得た結果は、人気企業トップ50社のうち31社に国営企業が入った。
就職希望先の上位10社は、以下の通りである。

1位:華為技術
2位:IBM
3位:中国移動
4位:中国石油化工(シノペック)
5位:ハイアール
6位:マイクロソフト
7位:プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)
8位:聯思(レノボ)
9位:グーグル
10位:中国石油天然気(CNPC)

トップ10でも、国営企業が半分を占めている。2001年と2003年に実施した過去の調査に比べて大幅に増えている。
業種別でみると、人気が高い順に

・IT・通信関連
・商社、金融・保険
・電力・石油などエネルギー関連
・官公庁

となる。
5~6年前は民間企業、特にIT企業、それに外資系企業に就職したいという学生が多かった。民間企業や外資企業の数が一気に増えたことに加え、学生が民間企業や外資企業に将来性を感じたからだ。だが、ここ数年はむしろ逆の傾向になっている。国営企業の人気が盛り返してきていて、民間企業への就職希望離れが進んでいる。
その背景には、次のような理由がある。

1.知名度の上昇:中国企業の時価総額が拡大し、世界的にも知名度を増してきた
2.国営企業の成長性を評価:中国経済成長と共に今後も国営企業は成長していくと見込んだ
3.国営企業での人脈づくりが必要だと痛感した

特にここ数年、国営企業への希望が再び高まっているのは「就職した後、数年後にコネクションをつけてから民間企業に移りたい」という学生が増えているためである。最初から民間企業に勤務するより、政府関係者とのコネクションがあるほうが出世しやすいし、起業する場合にも有利になる。つまりビジネス上、国営企業とのコネクションがあれば、キャリアアップしやすいと考えているのだ。
大学生に「会社を選ぶ上で最も重視することは?」との問いの結果からもこのことが分かる。「自己の将来性」が最も多く、「報酬・福利厚生」「研修機会」「企業規模」「知名度」と続く。「自己の将来性」は、人脈づくりのために国営企業を望む学生が多いことにつながる。一方で、「報酬・福利厚生」と答える学生も多い。中には年間の報酬を3000ドル程度を要求する学生も半数近くいて、拝金主義もうかがえた。
確かに大学生の見解は正しいかもしれない。中長期的な企業の成長と自身のキャリアをしっかり考えている。それに比べると日本の学生は、中長期的な視点がやや足りず、その時の流行で就職先を決定する傾向がしばしば見られる。
8月から独占禁止法が施行
外資系企業や民間企業の動向については、8月から施行される独占禁止法も関連してくる。
独占禁止法の本来の目的は、日本と同様に市場の独占行為を防止や抑制、消費者の合法的権益と社会の公共利益を擁護することである。しかし中国の場合は、そもそも市場経済に完全に移行していないため、ほとんどの産業においては国営企業がトップシェアを独占しているのが実態である。
海外からの直接投資のうちM&A比率は、2004年は11%だったが、2005年では20%に急増した。商務部の黄海・部長助理によると、商務部が2005年に設立を認可した外資系企業は、過去12年間の3倍に相当する1027社に上ったという。この勢いで電力や鉄道、メディアまで独占されると国の決定権や利益が脅かされることになる。
こうしたことを懸念して、独占禁止法は施行される。独占禁止法が施行されれば、外資系企業の中国企業買収は規制される。国家の安全が脅かされる可能性があるとみなされた場合は、中国当局の承認は得られない。独占禁止法という名の法律を作って、中国当局が外資系企業、民間企業を牽制しているというわけだ。