中国経済低迷 日本経済・企業への影響
 中国の経済成長率は、平均9.8%で29年間続いている。バブルが崩壊すると騒がれ続けながら、北京五輪まで高成長を維持してきた。 株価暴落、不動産バブル崩壊、物価高騰、内需低迷、そして輸出減少ーー。五輪という最大のイベントを終え、中国経済はかつてない危機的状況に直面しつつある。
 世界が驚異的に感じている貿易黒字額では、2005年に1000億ドルを超え世界最大規模になってから、07年には約2622億ドルと2年で2倍以上に急拡大している。財政が赤字の日本や米国と違い、各級政府の財政収入も年平均で20%も増えているのだ。そんな国はほかにない。
 しかし、さすがの高成長にもかげりが見え始めた。四川大地震や物価高騰の影響で、2四半期連続で成長率の伸びが鈍化。輸出も低迷気味だ。そして株価。上海総合指数は五輪期間中、一時15%も急落。昨年10月に6000を超していた指数は2300台になった。6割超の暴落だ。
 崩壊懸念がつきまとうのは、中国経済が輸出依存型であり、13億人の市場が魅力のはずの国内消費が拡大していないからだ。その輸出もサブプラ以降の世界経済の変調で、頼みの欧米市場が後退色を強めているため、鈍化が顕著になってきた。この先の見通しも暗い。 一方、GDPに占める国内消費の割合は5割以下で、地方では減少傾向にある。先進国に比べて半分以下でしかない。
 そのリスクのある中国向け輸出に依存しているのが日本。38カ月連続で対中輸出は前年実績を上回り続けている。7月の統計では、ついに対中貿易が対米貿易を上回った。原材料を中心に鉄鋼、建設機械、工作機械などの生産財、石油化学製品など素材、自動車や電子部品などの日本企業の業績の回復は中国経済成長なくしては語れないのだ。 株価暴落、不動産バブル崩壊、物価高騰、内需低迷、そして輸出減少ーー。五輪という最大のイベントを終え、中国経済はかつてない危機的状況に直面しつつある。
 それだけに逆風が吹き始めたら影響は大きい。中国の対米輸出が落ち込めば、対中輸出に急ブレーキがかかる。すでに落ち込み始めている企業もある。
 株価暴落、不動産バブル崩壊、物価高騰、内需低迷、そして輸出減少ーー。五輪という最大のイベントを終え、中国経済はかつてない危機的状況に直面しつつある。
 懸念されるのは、景気後退に伴う社会不安の増大だ。五輪中は武装警官を繰り出して治安強化に努めたが、祭りは終わった。食料品高騰、失業、家計破綻などが民衆を襲う。その反動でデモや凶悪犯罪が増える可能性は捨て切れない。テロの脅威も依然続く。中国への観光、出張にはこれまで以上に警戒が必要になってくる。(おわり)