企業業績の悪化で、ますます労働条件の悪化が予想されます。中でも格差が拡大しているのは女性。今後、女性にとっては、さらに厳しい労働条件下に追いやられそうです。
 総務省の労働力調査によると、女性の年齢階級別労働力率は出産を機に退社し、子育て後に再就職する人が多いため、25~39歳まで落ち込むM字型カーブが特徴です。M字の底になるのは平成7年に30~34歳(この年代の労働力人口の53.7%)だったのが、18年には30~34歳(同62.8%)と35~39歳(同63.6%)になっています。この背景には、晩婚化などによって子育て世代の年齢が上がっていることがあるとみられます。
 女性にやさしいと表彰された日本企業の人事部門をかたっぱしから取材したのですが、女性の再就職は実際には余り進んでいるとはいえない状況でした。仮に再就職を支援した女性がいても、数十年前にたった1人いるだけで表彰されている企業もありました。なかなか難しいのが現状なのです。
 それでも、5年以上も専業主婦だった40歳の女性をいきなり正社員として採用した企業もあります。この企業の人事課は「20~30代の女性が出産を機に退社してしまう。家庭と仕事と両立している40歳以上の見本となる女性も存在しない。パソコン能力や事務的な仕事を覚えるのは遅くてもいい。若い女性へのアドバイザー的な役割も期待できるので、やめる女性も減り社内の雰囲気もよくなるのではないか」といいます。
 買い物の決定権の多くは主婦が握っているため、家庭用のセキュリティ商品など家庭で使うものなどを扱う企業は、そういった傾向が強く出ています。
 退社して長期にわたり専業主婦だった女性は、仕事の面の空白を埋められるかどうか、不安をもつ人もいると思います。でも、企業は実務より主婦の体験そのものを能力として考えているのです。
(生活経済ジャーナリスト・嘉悦大学短期大学部准教授)