中国のソフトウエア開発が進んでいます。経済成長を維持するために、中国は技術者の人材育成にすべてを注いでいるといっても過言ではありません。それは、連載15回目の「ものづくりの分野で日本が中国に抜かれる日が来る?」でも少し書きました。
 技術者を活用するにあたっては、2種類の方法があります。
 1)技術者が発注する国に出かけて開発を行うオンサイト開発
 2)国外から発注されたものを、国内で集まったソフトウエア技術者が行うオフシェア開発
 オフシェア開発とは、人件費の安い国に開発拠点をシフトしたり、海外のパートナーに開発委託(アウトソーシング)することをいいます。近年はインドや中国、ベトナム、ロシアなどにオフシェア開発を請け負う企業が設立されています。
 オフシェア開発で成功した中国の都市に北京市の中関村があります。既に北京市の中関村ブランドは定着しています。
 ソフトウエア開発企業は、年々増加しています。技術者が200人を超えるソフトウエア開発企業はすでに200社以上もあり、売上高で1000万ドルを超える企業も60社以上あります。
 インドや米国と比べると、まだ小規模な会社が多いのですが、これからの拡大が期待されています。実際、北京のソフトウエア産業は、著しく成長しています。北京市のソフトウエア産業の総売上高は、中国全体の4分の1を占めています。
 以上のことから、製造業が中心となる中国の経済成長において技術者の育成が最も重要視されているわけです。今後の中国経済は専門性の高さ、つまり技術の獲得にかかっていると言っていいでしょう。
 では、技術者の育成をどのように行っているかを見ていきましょう。

1)大学での育成
 北京市内では、ソフトウエア開発技術者を育成している大学が実に59校もあり、6万人以上の学生が在籍しています。2001年には「プログラマ育成基地」が設置され、2002年には8カ所のソフトウエア学院が設立されて、4000人以上の技術者を社会に送り出しました。

2)政策での援助
 中国は2001年から2005年までの「第10次5カ年計画」により、ソフトウエア産業の育成に力を入れています。加えて、2000年に「ソフトエウエア産業、IC産業発展の奨励に関する若干の規定」も定めました。その規定では、2010年までに、技術者を先進国のレベルと同等のレベルまでひき上げることが掲げられています。
 また、中国政府は2002年に「ソフトウエア産業振興アクションプラン」も定め、ソフトウエア技術者の育成強化も目指しています。さらに、106社の国家重点ソフトウエア企業を指定。そのうち16社が北京市にあります。
 北京では、ソフトウエア企業が現地の技術者を採用すると優遇されることが複数あり、このため、技術力のある企業を北京に集中させることができたと言えます。具体的な優遇としては、
・関税や輸入増値税の免除
・3%以上の増値税の還付
・助成金の交付
・利益が出ても3年間は所得税を免除
などがあります。
 中国に進出している日系のメーカーなどを訪問すると、現地の日本人担当者は、「中国人技術者の人件費は安い」 「技術のレベルが高い」と言います。現地の中国人を採用することでも優遇される政策があるために、「日本人の技術者を日本から派遣するよりも効率がいい」というのです。中国政府による技術力のアップは確実に効果を上げているのではないでしょうか。