オバマ米新大統領の就任式をめぐっても、世界のテレビ局は新政権の政策内容を詳しく伝え、論じていました。
 ところが日本のテレビは、新大統領のスピーチ方法や、パレード中に車から出て手を振ったことなどを、まるでタレントのように報じていました。
 米国で初の黒人大統領ということへの興味が強いのでしょうが、経済面では為替や貿易などで日本が不利になることが懸念され、日経平均株価も急落した現実を忘れてはいけません。
 こんな中、トヨタ自動車の昨年の販売台数が米GMを抜き、創業以来初の世界首位に。とはいえ、このような経済情勢の中で「世界一」になっても、米ビッグ3が存続の危機に立たされているだけに、素直に喜ぶ気にはなれないのではないでしょうか。
 国内では今年、正社員のクビを切る会社が本格的に急増しそうです。東京商工リサーチの調べによると、今年はすでに1月の段階で、製造業を中心に20社以上が正社員の希望・早期退職などを募集しています。
 この制度を利用せずに会社にしがみついている人が多いかと思いきや、実際には募集定員を上回る人が手を挙げる傾向にあるのです。
 バブル崩壊後にも、早期退職制度を利用して退職した知人がいました。「働かなくて年収に相当する金額がもらえるなら、その金で資格とって、次の転職に生かす」と、その顔にはまだ希望の色がのぞいていました。
 しかし今年は、早期退職制度をめぐる人々は悲観的です。「残っても企業はいつ倒産するかわからない」「早期退職制度を利用できるだけまし。来年はもっと景気が悪くなる」と。
 早期退職などを募る企業は、あっという間に100社を超えるだろうといわれます。応募するかどうかは会社の業績動向にもよりますが、悲観しすぎず、逆にチャンスとして生かすことも大事です。
(生活経済ジャーナリスト・嘉悦大学短期大学部准教授)