オバマ氏の異母弟が中国人女性と結婚し、7年前から広東省・深セン市で生活している。
 21年も会ってなかったマーク・デサンジョ氏は輸出業を営みながら、ボランティア活動に従事しており、今後はオバマ氏の就任を祝って米国に渡るなど関係強化が進むことが伝えられている。
 初めてのアフリカ系の大統領、バラク・オバマ氏が米国で就任したことを受けて、「華僑系の人が大統領になることも夢じゃない」と、中国が低迷する中で、チャイニーズドリームが再び巻き上がることを期待している在米華僑人も増えた。
 ところが、そんなオバマ弟の力もはかなく、実際には対中関係が良好になると考えている中国人は少ない。多くの庶民はむしろ悲観しているようだ。
中国人の多くはオバマ氏の実力に疑問符?
  中国のウェブ上でのアンケートでは、「今後の米中関係はどうなるか」の質問に対して5割以上が悪化すると答えている。また、大統領就任直前に行なわれたアンケートでも、「オバマ氏は貿易問題で中国に圧力をかけ、波乱が生じるだろう」という意見が3割以上もいる。
 新財務長官ティモシー・ガイトナー総裁が、上院金融委員会へ提出した書簡で、「新政権としては中国が為替操作をしているという認識を持っている」と発言。またヒラリー・クリントン新国務長官が「良好な対中関係を希望するが、それは中国自身にかかっている」などと発言したことで、中国が米国に対して警戒心を高めているのだ。
 アンケート結果ではさらに、オバマ氏の実力に対しても「金融危機を解決できるか」という質問に「難しい」とのシビアな意見が多く、お祭り騒ぎどころではないという印象である。
 香港や台湾の有名な占い師が、そんな今年の年男でもある丑年のオバマ氏を占ったところ、「オバマ氏には、数々の困難が待ち受けているだろう」と、予想している。しかも44代目の大統領ということで、死とも発音できる4が2つ続くことで暗殺の可能性なども否定していない。
 そんな中、中国では旧正月だというのに今年は景気が悪いため、お年玉は2割カットするという家庭も増えている。小売業売上高の昨年の伸びは香港で11.5%だが今年はマイナス成長。さらに中国では、小売業売上高の名目成長率は昨年の18%から15%に減速すると予測されている。
 中国では、当局が景気刺激策として国民に最高180元(約2300円)の給付を計画している。昨年は、北京五輪も後押しして国内消費は拡大した。中国の社会消費財小売総額はすでに11月上旬で一昨年の総額を超えており、10兆元(150兆円)となっている。しかし、今年は昨年のようにはいかない。政府としては、中国版定額給付金で底力をあげたいものだ。
 それに加えて、旧正月は、1年のうちでもっとも株価が下落するときである。アジアの多くの国でも旧正月は株式市場が休みのため、一時的に日本に資金は流入するが、その後はまた中国に資金が戻り、例年であれば株価は上昇傾向になるのである。今年も旧正月後に例年通り上昇するのか、世界が注視している。
米国も注視する中国不動産暴落の恐怖
  08年末の中国の商業銀行の不良債権比率は2.45%となり、1年で4%近くも低下した。中国銀行業監督管理委員会の劉明康主席は、世界が100年に一度の金融危機に見舞われる中、中国の銀行は健全性が高まっていることを強調している。世界の中心的存在となるべくアピールしたいところであるが、その強さの裏には不安材料も抱えている。過去の株価は政策で管理できた。このところ政策の影響は薄くなっているものの、市場経済に移行していない中国において、政策で株価が左右されていることは確かである。
 しかし、政策によってもコントロールできないのが不動産である。都市部においては大きく不動産価格が下落しているところもあるが、全体的にみれば、まだ急落しているとはいえない。
 だが、不動産暴落の懸念は付きまとう。何より不動産バブルが崩壊すると、銀行は直接打撃をこうむる。中国経済が今崩壊したら世界恐慌を引き起こしかねない。オバマ政権も中国経済の今後を注視せざるを得ない。
 米中関係には、貿易摩擦による人民元切り上げ圧力、ダンピング訴訟問題など課題が多い。1月27日、米国際貿易委員会(ITC)は、マットレスなどに使用されている中国製バネをダンピングと認定し、反ダンピング関税をかけることを決めた。このままオバマ米大統領が拒否権を発動しなければ、上乗せ関税が適用されることが決まる。
 しかし、そうした中国への圧力によって、米国産業が復活し、経済が回復するという簡単なものではない。中国発金融危機ともなれば、世界、とりわけ米国への影響は甚大だ。
 オバマ大統領は、中国との巧みな外交で、両国間に山積する課題を良き解決へと導くことができるのか。オバマ新政権と中国との今後の関係が、世界経済の命運を握っているとも言えそうだ。