世界経済の流れに簡単に飲み込まれてしまう個人の存在。逆にこの時代の流れを見極め、利用することも大事です。
 日本がバブルのとき、私は香港で働いていました。外国語ができなくても多くの日本人OLが現地採用された時代。彼女たちは「今は日本語しかできないけど、ここにいれば外国語を話せるようになる。それから帰国すれば、今より給料がよくなる」と夢を抱いてました。
 ところが言葉もできないうちにバブルは崩壊しリストラに。知人の一人はさっさと帰国して雑貨店の店員になりました。無理して現地で仕事を探して苦労したところで、本当に言葉を習得できたかどうかもわからないといいます。
 彼女は日本語しかできないのに仕事があったこと自体、恵まれすぎと認識したのです。さらに香港での体験で甘すぎた自分を思い知った半面、早すぎる時代の流れを見極めて生きることの大切さも学んだのです。軌道修正は早い方がいいことを実感したと言います。
 今後数年間の日本は、企業業績の明暗が大きく分かれるでしょう。合併・再編で生き残る産業、生き残らない産業、そして大きく伸びる産業…。多くの産業が低迷する中で伸び続ける分野もあります。
 いずれ逆転すると思われていたITや介護、富裕層向け消費関連ビジネスなどが、旧式のビジネスで成功していた産業を追い抜く時期が早まるでしょう。
 同じことは個人でも言えます。パソコンやSNS、スカルプ、WEB作成やエクセル表計算を使いこなす必要のなかった人が、ハローワークなどの研修で習得する必要があるのと同じこと。若い人に合わせて携帯小説や携帯での検索を利用し、学ぶことも大事です。
 これからは、これまで成長していた企業や人材とは違う人が成功する機会が増えるでしょう。個人に求められるのも「チェンジ=方向転換」です。
(生活経済ジャーナリスト・嘉悦大学短期大学部准教授)