現在、日本で仕事を探している中国人をはじめとした外国人の募集に対応している人材ビジネス会社は100社を超えます。その一方で、中国や海外で働きたい日本人のための人材ビジネス会社もあります。これまで閉鎖的だった日本でも人材のグローバル化が進んでいると言えるでしょう。
 さらにグローバル化も昔に比べると「母国語をしっかり話せる外国人なら誰でもいい」という時代から、「外国人でも経験があり、能力がある人材がほしい」時代に変化してきています。日本では中国人の採用が増えていますが、何社かの人材ビジネス会社に取材したところ、中国人に求められている条件は以下の通りだと分かりました。
1 日本語がある程度できる
2 中国にある支社とのコーディネーターができる
3 将来は中国の支社の幹部になってほしい
 年齢でいえば30代前半と第2新卒が注目されています。
 日本経済が低迷している中、中国マーケットに進出する日本企業が増えています。そういった日本企業は中国支社において、現地採用で中国人や日本人を採用したり、日本人を駐在させたりしています。
 しかし、現状では中国人と日本人は、なかなかコミュニケーションがうまく取れていないケースの方が多いようです。そういったことから、日本にある本社の意向や目的を理解できる中国人が働き手として求められています。高いマネジメント能力で現地のスタッフをうまくまとめてくれることを期待しているのです。
 一方、中国の企業で求められている日本人の採用は、よりマネジメント能力が高く要求されています。一般的には、部長や係長などとして部下をまとめたり、プロジェクトマネージャーの経験があることが必須です。
1 マネジメント経験がある
2 本社とのコーディネートができる
3 現地のスタッフをまとめることができる
4 語学力や適応力に優れている
 日本と中国、それぞれ求められている人材においては、若干違いますが、本社の意向を理解してまとめる能力は共通して必要です。意外と思われるかもしれませんが、仕事の専門性はほとんど求められていません。それよりもコミュニケーション能力とリーダー能力、つまりは高い人間力が求められています。
 本社の意向をどれだけ現地に浸透させられるか、本社と支社のすれ違いや考え方の差をどれだけ縮めることができるのかといった問題を解決できる人間が必要だからです。このため、専門性は二の次となっています。
 私も留学中は「日本と外国の橋渡し的な存在になりたい」と憧れていました。けれども20代のその頃の私には、なかなか思うようにいきませんでした。
 既に国によって考え方の違があるのに、その違いの塊が本社と支社ではさらに拡大します。本社がNOと言えばNOということを現場に理解してもらうために、現地の人に何度も説明した経験もあります。そういうことが頻繁にあると、現場のモチベーションが下がり、業績も悪くなってしまいます。簡単に「橋渡し的存在」といっても、板ばさみの状態が続きました。
 実際に海外で働いてみると、通訳や翻訳業務を中心にクライアントの意見を尊重して協力することや、日本と外国との橋渡し役として、うまくコミュニケーションを取ることが仕事の大半になります。そして特に、「うまく相手にきちんと伝わるまで説明する」ということが求められました。
 大変な仕事でしたがその経験は、コミュニケーション能力やマネジメント能力の強化につながりました。自分の専門性を高めるには時間がかかりますが、コミュニケーション能力やマネジメント能力、コーディネート能力は、姿勢や考え方ですぐに鍛えることができます。
 異なる人種や文化の中でキャリアアップをしようと考えている人は、自分の専門性を高めることも大事ですが、まずは人間力を上げていき、どこでも対応できるようにしておくとよいでしょう。そうすれば、自然とチャンスがつかめるに違いありません。