“適性”を見つけて金融業界で輝く!キャリアデザイン指南
https://job.career-tasu.jp/finance/columns/pro009/008/
<第8回>2017.3.15
金融系企業を志望する人が準備しておきたい「心構え」
金融業界といっても、銀行、中小企業関係金融機関、農業関係金融機関、政府系金融機関、ノンバンク、リース業から、証券、保険、クレジットカード……と多種多様。それぞれの企業規模や特性、取扱商品は様々です。
私も20代前半にアメリカの銀行に勤めた経験がありますが、当時とくらべて金融業界は様変わりしました。さらに昨今の低金利を受け、預金者から集めたお金を運用する従来の銀行のビジネスモデルは成り立たなくなり、取り巻く環境は非常に厳しいものになっています。
今回は「金融系企業を志望する人が準備しておきたい心構え」をご紹介します。

転換期に立つ「銀行」で活躍するために必要な「率先力」

マイナス金利の波及は多方面に及んでいますが、銀行にとっても「絶対に倒産しない」という確証が得られなくなっています。預金や融資から得た利息を収入源としたモデルは旧式のものとなり、今日では新たな金融商品が次々登場しています。中元・歳暮商品を扱ったり、広告をビジネスとするゆうちょ銀行のビジネス転換も市場変化の象徴的な例といえるでしょう。
これは、同じ「銀行」という看板を掲げていても、商品・体質を変え差別化しないと生き残っていけない事情を暗喩していることになり、銀行志望の人は過去から現在に至る過程の中でどのような変化が生じ、いまどのような潮流の中にあるかを理解することが大前提となります。
その大前提を踏まえ、これからの銀行で活躍するためのキーワードは「率先力」だと私は考えています。特に外資系金融機関ではリーダー的素養は欠かせません。もちろん、日本の銀行を志望する人も「大転換期に突入した銀行のこれからは自分が率先し、新たな銀行のカタチを創っていく」という気概をもってほしいと思っています。そして、その気概は面接時にもきっと有利に働くはず。例えば「私は学生時代に◯◯の勉強をしていたので、入行後は◯◯の仕事で貢献できます」といった気概を、確論に落とし込めれば何十人、何百人もの学生と接する面接官も、きっとあなたのことが印象に残るでしょうし、高評価が得られるでしょう。
そのほかにも会計士、税理士、ファイナンシャル・プランナー(FP)等の資格取得は大きな武器となることでしょう。難易度の高い資格を取得した姿勢からは、その人の前向きな姿勢ややる気が窺えますし、資格の勉強で培った専門知識は仕事上でも有利に働くうえ、希望セクションに異動できる可能性もグンと高くなるはずです。

たくましさと、めげない精神力が必須の「証券会社」

同じ金融系企業でも、証券会社と銀行は特性が大きく異なります。銀行であれば、お金を扱うことに所以する正確さ、お客様との信頼を構築する誠実さ、企業の強みや将来を見据える分析力などの素養が必要とされます。
一方の証券会社では自分が分析し、これだと思った商品を買ってもらわないといけないわけですから、若干の不安はあっても「自分を信頼してぜひ買ってください」と言い切れる押しの強さが求められます。これは成績を伸ばすことに執着できなければ、生き残っていけない証券会社の厳しい現実も示唆します。このことから「イベント企画時交渉が得意だった」「低迷チームを常勝チームに押し上げた」という価値観や実績をもつ人ほど、証券会社に向いていると考えることができるでしょう。
また、「あの時売ってほしいと言ったのに、もう少し待ったほうがいいと言われた結果、数百万円損害が出た。どうしてくれるんだ」というような、お客さまのクレームに対応しなければならないケースも想定されます。しかし、これは証券会社に限った話ではありません。最近では、銀行でもハイリスク・ハイリターンの金融商品を扱うようになっていますので、いずれにせよ金融業界で働くからには、たくましい精神力が必須となります。

志望企業が何を欲しているかを、しっかり見極めよう

銀行であれば、都市銀行、地方銀行、信託銀行。中小企業関係金融機関であれば、信用金庫、信用組合。農業関係金融機関であれば、信用農業協同組合、農林中金。そのほかにも、政府系金融機関、ノンバンク、リース業から、証券、保険(生命、損害)、クレジットカードと、金融業界と銘打たれた「地図」には特色が異なる業態の企業・組織体が林立します。
一方、地方を主戦場とする信用金庫では、個人商店向けの融資や投資信託などを扱う特性があり、前述 した率先力や精神力に加えて、地域の町おこしやイベントへの参加機会が多いことも特徴です。こうした場合、評価されたのはパワーの源泉が「地域愛」にあるのかどうかという点です。信用金庫に就職を決めた私のゼミに所属する学生の例をあげましょう。
── 学生時代から成績があまりよくなかった彼女は、字も乱雑で計算も苦手。そんな彼女のことを「就職できる?」と周囲は心配していたのですが、実は彼女は短所を補う対人力を有した人だったのです。相手が気持ちよく話せる相槌の打ち方を彼女は会得していましたし、大勢が集まる場では高い協調性を発揮する人気者でした。そんな彼女が就職したのは地方都市の信用金庫だったのですが、入行後は積極的にイベントに参加し、ご高齢の方からも厚い信頼を寄せられ優秀な成績をおさめています。 ──
「成績が優秀だから」「計算や数字が得意だから」「就職先はメガバンクだとみんなが安心するから」「証券会社だと残業も多そうだけどその分収入が多いから」といったイメージをもとに、金融業界を志す人が多かったのはすでに過去のこと。
転換期のまっただなかで厳しい競争にさらされる金融業界では今後、未経験のジャンルにも臆することなくトライしていく柔軟性や率先力が求められることになります。
こうした背景からも、中国で「C-Mailが流行っている」、欧米で「デビットカードが普及している」など雑誌や新聞などで情報を取得したとき「C-Mailが流行っている理由はなぜか」「日本との違いは何か」「日本でデビットカードの普及が遅れた理由はどこにあるのか」といった“気づき”を元に、マクロとミクロな視点から自分なりに分析していく……。このように、学生時代から流行に敏感になり、その流行に対する分析力を養っておくことが、変化著しい金融業界で活躍するうえでの「源泉」となることでしょう。