癌の菅原さん 癌保険編
 「3年前に、胃癌と宣告された。人事部の課長に配属されたときから、胃が痛くなってね。昨日まで一緒に酒飲んでいた同期をリストラしなければならなかったんだ。リストラされる方もショックかもしれないけど、する方も嫌なんだよ」
 K製造会社に35年間、勤務した菅原敏郎さん(58歳)は、2年前から転勤を希望、実家のある鹿児島支店の工場長になった。手術して胃を切ってから人生をゆっくりリセットしたいと田舎を選んだそうだ。
菅原さんは典型的なマジメ人間。入社以来、一度も遅刻・欠勤がない。責任感も強いため会社から期待を一身に背負ってここまできた。朝は一番早く会社に来て、夜は最後の一人になるまで残業していた。そんな性格が災いして癌になったのだろうと振り返る。
 菅原さんの唯一の趣味だった貯金は、癌治療のために使い、残りは引越費用にまわした。
 最近の人は、死亡保険よりも医療保険に重点を置いているようだけど、少し前の年代はそうではなかったという。
 「定年後の生活費のことを心配していたから、生きている限りもらえる終身保険に加入していた。先に自分が死んだ場合の妻や娘などの生活費のことも気になったから死亡保険は最高額にしていた。しかし、自分がまさか癌になって、こんなに入院費などがかかるなんて考えてもいなかった」
 80日間入院し手術費と入院費、差額ベット代と食事費用、お見舞いのお返し金なども含めるといっきに400万円以上も払ったそうだ。よく選びもせずに癌保険に入っていたため自己負担も200万円はかかった。
 確かに癌保険の選び方は難しい。癌と診断されたときに出る「診断給付金」は、始めての診断だけが対象になるタイプ(日本生命の「ニッセイがん保険EX」等)と、治療後も癌の再発した場合に備えて2年以降なら再度支払うタイプ(アリコジャパンの「ガン保険」等)の2種類ある。
 入院に対して出る「入金給付金」と、手術に対して出る「手術給付金」の受け取り金額もさまざまだ。
 菅原氏は「診断給付金は100万円で、入院給付金は1万円。通院費はでない」商品を選んでいだ。しかし、癌は退院してからの通院費がかかる。「診断給付金や入院給付金だけでなく、通院費もでる」商品にすればよかったと後悔している。
 生命保険と医療保険にプラスアルファで、さらに選んで入るのが癌保険なのだ。
 完全に治ったわけではないこれから先、定年を迎えたら、さらに心配は増すという。
 
お小遣いは3万円
 癌になるまでのお小遣いは7万円だった。それが、「飲み代に使ったことが体にもよくなかった」と奥さんが反省し、まっすぐに家に帰宅するように3万円に減らされたそうだ。幸いにして物価の安い地方に転勤したか、充分に暮らせる。
 入院して嗜好が変わった。毎晩酒を飲むよりアイスクリームが好きになった。近所のスーパーのアイスクリームでは食べ飽きて、もっぱら通販で注文している。すでに1500種類以上も試したそうだ。オススメは「パステルのなめらかプリンアイスクリーム」だとか。
菅原さんの小遣い帳

月額   3万円
アイスクリーム代 9000
  ランチ代 11000
外食代 8000
  その他使途不明金 2000
  小計 30000
収支   30,000