おいてけぼりのお父さん 
 「どうやら俺は亭主関白だと思っていたのは、僕だけだったみたい」
 とブツブツいい始めたのは、大手量販店に勤務する吉岡宅さん58歳。
 「妻は来年から娘のイギリス留学にくっついていくって行くっていうんだよ。俺はどうするんだ。もうすぐ年で定年だというのに!」
 寂しさとくやしさと混じった顔で訴えられても・・迷惑な顔している私をよそに続けた。
 「イギリスに行く娘をうらやましいと言いながら、妻も英語のレッスンに通っていたもんなあ」
 どうやら奥さんは、近くの個人病院の経理の仕事をしていたようで、稼いだカネをへそくりしていたらしい。
 娘は自分で貯金していたようだ。
 「どこにそんなカネあったのだろうなあ。月収40万円では足りないといつも文句言われてたのになあ」
 会社ではあまりにヒマすぎて仕事がなく会社にいるのが辛い。本当は定年まで待たずに会社を辞めようかと考えていたそうだ。それだけに、ショックは大きい。
 「あと1年待ってくれたら、俺も行くのに・・」そういったら、ひどく拒否されたという。
 転職組みだから退職金は少ない。それでも500万円はあるだろう。マンションのローンは払い終わった。
 「退職金は絶対にあげない!」
 吉岡さんは強がって見せる。そんなことより年金がもらえても一人でどうやって生活するの? 料理も作れないのでしょ?
 吉岡さんの勝手と頑固さに妻も子どもも忍耐できなかったのだろう。
夜中一人で無料マージャンが大好き
 「いつもお金がないといわれ続け、我慢してきたつもりなのに」という吉岡さんの小遣いは3万3000円。
 唯一の楽しみは、夜中一人でパソコンに向かうこと。ゆったりとした時間で、無料でできる一人マージャンをすることだそうだ。
 「40代の前半は徹マンできたけど、もう体力がないから出来ないなあ」
 なんだか私まで元気がなくなってきた。
 そういえば日本の亭主関白ってどこにいったのだろう。最近みなくなったなあ。
夜中一人マージャンが趣味な吉岡さんの小遣い帳

     
  月額 33,000
ランチ代 11,000
雑誌&本 2,000
  食事代 7,500
  小計 20,500
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