月収が2分の1に減っても地元の中小企業なら大事にしてくれる
 「退職後は地元で働きたい。東京まで通う通勤ラッシュの時間はなるべくゆっくりしたい」
 というのは、2時間かけて東京の大手総合メーカーC会社まで通っている山田正二さん(56歳)。
 私が取材した100人のサラリーマンのうち、「定年後は地元で働きたい」という希望者は6割強もいた。特に千葉県や神奈川県の出身の人は、埼玉県やその他の地域よりも地元で働きたいという意向が強かった。
 「朝の満員電車ではかかさず新聞を読んで、帰りは最終電車にぎりぎりセーフで乗り込む。どうせ酔っぱらっているから立っていても平気だったけど、さすがにもう年だ。疲れてきた。少しゆっくりとマイペースで地元で働きたい」
 定年後の人材を採用したいと思っている企業は、大企業よりも中小企業のほうが強い。大企業で働いた経験や研究の知識が欲しいと歓迎するのは中小企業のほうだ。そういった中小企業は東京よりも地元のほうが多い。
 「もう会社におだてられて働きたくない。どうせ会社の戦力からははずされているのだから」
 というが、そう気づいたのはごく最近のことだという。
 部長までの昇進は早かった山田さん、その後、同期はどんどん出世。いつの間にか出遅れたものの、一気に追い越すかもといつまでもおだてられ続けた。
 「浪人していたから新卒で入社したときは25歳、でも退職金は平均で1400万円くらいだと思う。だけどもう定年まで待てない。それでも転職しようと思う。昔からの知り合いの地元の中小企業の社長が大事にしてくれそうだから」
 年収は現在の850万円の半分に減るけど、60歳になるとその企業では採用してくれないといったそうだ。
 「残りの人生くらい好きに過ごしてもいいよな。それくらい女房だって許してくれるよね」
 自分に言い聞かせるように、自分という価値を認めてくれる居場所を探しているようだった。
 山田さんの小遣い
 それでも転職後は収入が減るから節約しなければならない。
 今のうちに何かチャンスはないかと、株式投資や宝くじなど資産が殖えそうなものにはなんでもチャレンジしている。
 ミニロト、ロトシックス、ナンバーズ、宝くじ、投資信託など。
 「ナンバーズ3は一枚、200円。余裕があるときには一枚の申し込みカードで、0から9までの数字の中から3選んだものを、最大でA~E枠に5通りのパターン申し込める。ここ数ヶ月は当選の数字と自分の購入した数字をちゃんとノートに控えているよ。まあ、それでもなかなか当たらないから、その日の気分で選ぶことが多いけどね」
 賃貸だからローンもない。子どももいない。だけど給料は全部奥さんががっちりと握っているそうだ。
 まだ転職することを奥さんには相談していないという。どうやって話だしたらいいのか話し出せないのだろう。
 「宝くじは引き続けなければ当たらない」
 それが山田さんの口癖だった。
4万円山田さんの小遣い帳

     
収支 月額 40,000
宝くじ&ロト 18,000
   
ランチ代 19,000
その他 3,000
小計 40,000