中国発世界同時株安
中国が世界に与える影響は今後も続く。
 中国の株価を下落させたのは中国政府によるものだけではない。
 アメリカとの合意の上での戦略である。
 世界的にバブル状態を抑制させるために、もっとも株価をコントロールしやすかったのが、中国である。
 私はフィナンシャルタイムスと人民日報から米中のトップの話し合いの時期と内容に注目しながら両国の力関係と世界のマネーの動きを追っている。
 昨年の米中会談を振り返ってみると次のとおりである。
 つまり、昨年の12月第一回中米戦略経済対話が北京で実施され、ポールソン財務と呉儀副首相との間で株価を下落させる戦略が話し合われたのだ。中米戦略経済対話は5月に実施される。その内容しだいでは株価に影響を及ぼすことになる。
 
全人代の政策に注目
 次に大事なのは全人代である。3月12日から始まった全国人民大会(=全人代)は、日本の国会にあたるが、中国はその国会で決まった政策により株価に影響を与える割合が大きい。経済の各産業部分において重要な位置を示している。全人代の政策が直接、産業&株価に影響を及ぼすため投資家は過敏に反応しているのだ。
 全人代での政策に対して懸念材料が多いと判断した投資家が多かったためいったん売却される市況になった。しかし、それでも長期的にみればその下落率は小さく上海市場も深せん市場もあいかわらず過熱しすぎている状態である。香港市場も長期的にみると戻りつつあるがまだ段階的に大きく下げてもおかしくない状況である。
 急騰は急落につながりやすい。それでも投資したいなら今後の売買には短期的にみるほうがいいのかもしれない。

 

 
安定性を重視
 全人代では温家宝首相は、「中国政府の目標は、成熟した資本市場を確立すること。第一に上場企業の質的向上、第二に公開・公正・透明な市場体系の確立、第三に資本市場の監督管理強化、特に法整備、最後に株式市場に関する情報の適時公開を通じた個人投資家に対するリスク意識の向上が必要だ」と語っている。
 株式市場の発展に注目してはいるものの、健全さ透明性を重要視している。資本市場の基盤や制度の確立、特に非流通株式対策を急いでいる。
 外資企業を優遇する税制を廃止し過熱した投資を冷やす。
 株式市場については「株式市場を穏便に発展・乱高下を望まず安定させたい」と温家宝が示している。
 今後の株価は上海発同時株安のように9%もの急激な下落はないが調整局面が続くことが予想される。投資過熱を段階的に冷やさなければならない。
 このような株式市場についての方向性の中で投資過熱を冷やすために外資系企業への優遇税をバブル崩壊を力を入れている産業とそうでない産業がある。

 

 
共産主義の崩壊への第一歩を世界にアピール
① 物権法
 私有財産を国有と同じように保護していくことなど最終的に60カ所が修正されて可決した。例えば「建設用地使用権」の中では「建設用地使用権は登記時に成立する」との文言が盛り込まれた。背景には、外国人用の民間のマンションが立ち並び、中国人もマンションを購入する人が増えている。50年間の使用権のみを売買できるシステムは自由経済とは矛盾している。
 また土地の立ちのき問題などのトラブルが多発している中で、貧富の格差に対する不満がいっせいに爆発しては困る。
 共産主義の崩壊へ一歩を踏み出したことを世界にアピールし北京オリンピックを目指したいところだ。
②「国家予防腐敗局」
 江沢民派(呉邦国、賈慶林、曾慶紅、黄菊、李長春)追放のため不動産を中心とした汚職事件の取り締まりが強化される中で「国家予防腐敗局」が設立された。
 これから上海を中心に不動産や建設産業を中心にいったん混乱が起きることが予測される。長期的にみればクリーンにするための一歩であるが、一時的には不動産やインフラ産業は注視したほうがいい。
環境と農業がキーワード
 一方で環境問題と農業の改善には注目している。
 北京を訪問すればわかるが、誰もが空気の悪さに驚く。来年の北京オリンピックにむけて二酸化炭素の排出量や汚染問題を早く解決しなければ外国人の印象もよくない。環境問題には非常に力をいれている。
 農村地域へのきれいな水や空気、インフラの整備など、教育など生活に最低限のことを与えなければならない。
 今回は、上海発世界同時株安があったためベトナムのビナミルク企業などの現地企業レポートは次回お伝えする。
 ベトナムツアーの反響は大きく参加希望者からの連絡が殺到している。世界同時株安の影響も少なかったベトナム株への人気も伺える。

 

柏木理佳の今月のひと言
 私はほとんどの中国株をすでにいったん売却していました。ほとんどの銘柄がかなり上がりすぎていたので恐くなったのです(笑)。幸せすぎると恐くなるとはこのことでしょうか?チャートでみたら過去の天井の8割くらいに達していました。もういつ落ちるかわからないという不安に陥ったのです。
 それなら欲張らないでもう売ろうと決めたのです。
 ここ1年ほどの短期スパンでは世界的にいったん株式市場もマンション投資も熱は冷めるのではないでしょうか?
 10 年という単位で新しい新興国とつきあっていきたいと思っています。