ベトナム企業の選び方
時価総額&上場日
 4月号ですでに伝えたとおり、ベトナム株式市場は急成長しているが歴史はまだ浅い。ホーチミン証券取引所は2000年、ハノイ証券取引所は2005年にできたばかりである。
 日本人の投資家をはじめ急激に取引が増加したため、「柏木理佳と行くベトナムツアー」で訪問した3月には、証券取引所のシステムがダウンした日もあったほどだ。
 上場企業は100社を超え、時価総額は1・5兆円ほどである。
 昨年の12月まで50社ほどしかなかったが、優遇制度によって無理して上場し他企業も多い。数年前まで30社が3倍にまで増えている。
 
企業の選び方
 ① 新しい企業を選ばない。数年前にすでに上場していた30社から選択する。
 →このところ上場しやすい傾向にある。最近、上場した企業は急騰もしやすいが急落もしやすい。長期投資で時価総額が比較的大きく歴史と信用がある古くから上場している企業がいい。
 ② ブランド力がある。注目の産業の1位から2位の企業を選ぶ。
 →時価総額が小さいため株式市場はまだ全体的に流動性が高く不安定であるからこそ、消費者に長く信頼のある企業がベスト。
 ③ 広く浅く
 →一株あたりの株価が安いため、時価総額の大きく歴史のある企業30社投資しても総額50万円ほどである。1社に絞るよりも広く浅く投資するほうがいい。
 と、なると日本で販売されているベトナム株を中心にした投資信託で十分ということになる。しかしベトナム株投資歴が深くなり、慣れてきたら個別の銘柄に注目するのも悪くない。個別に銘柄を投資したい人は現地で口座を開設するしかない。現地の証券会社で外国人が口座を開設することはできる
 がその場ですぐに売買を開始することはできない。手続きに2ヵ月ほどかかる。登録後に日本の住所に口座が郵送され、その後、はじめて取引できる。

 

ビナミルク訪問レポート
 私たちは投資信託にも組み込まれている企業、ホーチミンのビナミルクを訪問した。訪問した本社ビルは、10階建てほどのビルでたいしたことはなかったが、不動産急騰によって資産は非常に増えている。
 ビナミルクは名前のとおりミルクを中心に乳製品全般を販売している。2005年の売上予想は前年比15%増の4兆3,400億ドン(約286億円)、利益は同14.2%増の5,270億ドン(約35億円)で、300種類の乳製品を販売している。国内の乳製品シェア5割以上を確保している。
 私たちに対応してくれたのはビナミルクの女性取締役と会計担当の女性だった。ベトナムでは昇進は男女平等であり、女性のトップは珍しくない。
 「熱い国での乳製品の保管方法は?」
 と、確認したが、大会議室に通された私たちの机の上に並べられたビナミルクの乳製品には、〇月〇日〇時〇分〇秒製造と、秒単位まで期されていた。
 たしかに日本でもここまでするところはない。
 「品質の管理にはとても厳しくしている。少しでも賞味期限が切れているものがスーパーで売られているのと、すぐにマスコミにたたかれる」過敏に反応していた。
 ベトナムではアイスクリームが流行している。日本のアイスクリームチェーン店、31(サーティワン)と同じようにアイスクリーム店が店舗を拡大していた。デートの途中でアイスクリーム店に立ち寄って食べるのがステイタスなのだそうだ。ビナミルクはアイスクリームではシェア1位ではないが、ビナミルクはベトナムで一番ブランド力のある企業といえる。ビナミルクの株価によって市場に与える影響も大きい。
 印象に残ったのは、民営化を進めているということを強調していたことである。
 ベトナムは中国と同じで国有企業がほとんどであるが、ベトナムのほうが民営化を促進している。
 ビナミルクも株主総会では外部の取締役が参加し、その意見は強い。公表する数字も正確であると何度もPRしていた。

 

アジアのファンドに注目
 ベトナムだけではなくアジア全域の株に注目が集まっている。新光投信が1月31日設定した華南地域や東南アジアのアクティブファンド「サザンアジア・オールスター株式ファンド」は、当初設定額が494億6455万円だったのにもかかわらず、純資産高1012億9400万円(基準価額は1万0613円)と2倍以上の資金が集まったため一時停止している。その他、アイザワ証券の「アイザワトラストフィリピンファンド」や「アイザワトラストタイファンド」、東洋証券のベトナム・インドネシア・フィリピンを中心とした「アジアン倶楽部」なども販売した。
 上昇率の高いベトナム株などにおいては株式市場の規模が小さいため数%の組み入れにとどまっているが、上昇率は緩やかだがベトナムより市場の規模の大きいシンガポールやマレーシア株を3割程度組み入れている。新光投信は「シンガポールは資産運用ビジネスが拡大中で銀行への注目は引き続き高いと思われる。カジノが2010年に開業が予定されている」と説明する。
–北京五輪が終わったころ、アジアのチャイナマネーは香港・マカオからシンガポールへ動くのかもしれない–
柏木理佳の今月のひと言
 ベトナム株が急騰したのは次の時期でした。
 ①WTO加盟が決まったとき
 ②外国人枠が拡大したとき
 です。
 このところ、「今日買いたい」と思っても、すでに外国人枠がいっぱいで買えないケースが多いのです。
 誰かが売った後にやっと買うことができます。
 人気のある銘柄はほとんど外国人枠がうまっていることが多いのです。
 また、ベトナム経済は中国経済に依存しているところがリスク面です。
 中国経済のバブルがはじけたときには注意が必要です。