3代目と福建省出身者に翻弄される味と経営

 「中華街の味が落ちている」
 都内で中華料理店を経営する謝さんが、最近の味を批評した。中華街600店余りの店のうち、中国料理店は250店ほどを占める。

 「今のオーナーは既に3代目。日本で生まれ育ったから中国語もたいして話せない。中国に住んだこともないから本場の味も知らない」(謝さん) 中華料理店の経営に興味のない3代目は、お客の呼び込みに積極的なわけでもない。昔からの常連客が経営者を訪ねて来ても店にいない。しだいに足も遠のく。
 「昨年の“段ボール肉まん事件”あたりから街に活気がない。今回の“冷凍ギョーザ事件”の長期化が追い討ちをかけるのでは、と懸念されています」(飲食関係者)
 旧正月(春節)のお祝いムードが続く2月の中華街は、観光客らで溢れかえっていた。人気店には長い行列ができている。その一方で、あるギョーザ専門店の看板の電気は消えたまま。シャッターが閉まったままの大型店もある。
 そもそも中華料理といえば、上海料理、広東料理、四川料理が代表的だった。一流の料理人をわざわざ日本に呼び込んでいたものだ。ところが最近は事情が違う。出稼ぎ労働者が料理店で修業を積み、資金をためて経営者になる。それは、上海人や北京人よりむしろ苦労をいとまない福建省出身者が多い。
 特に福建省出身者の進出が著しいのが中華街だ。新しい店の10軒に8軒が福建出身の経営者である。2年前、ある大型店が閉店したが、福建出身者が7億円で購入、名前を代えて店をオープンした。前の経営者は行方不明のままだ。3代目によって味が変わっていく一方、福建料理の味が日を追うごとに浸透しているのが現状だ。
 変化は味だけではない。福建出身の新華僑たちは、簡単に金になるビジネスの方法を考える。中国語を使えるネットカフェを開業したり、大きさを3分の1にした「1個90円」の肉まんチェーン店を経営するなど、利益率の追求臥最優先だ。昔から住んでいる、古いしきたりを重んじる老華僑たちは新華僑ビジネスに好感を持っていない。
 3代目と福建出身者。いい悪いは別にして、それが今の中華街の象徴となっているのだ。