変貌する中華街と毒ギョーザ事件
なぜ中国食品を輸入禁止できないのか 

 サバ、はちみつ、塩…。中国では、数え切れないほどの偽物食品が売られている。価格が安いという理由だけで、不法であろうが安全性が低かろうが購入する。スーパーでは高くて買えない人が9億人はいる。
 野菜も同じだ。路上ではどこから入手したのかわからない二又に分かれた人参などが売られている。深刻な環境問題を抱えている中国では、土壌・水質汚染が農業に与える影響は大きい。先進国並みに農薬を使わずに野菜を作れるようになるには10年はかかる。
 農薬問題だけではない。食品問題の解決に時間がかかるのは、政策を決定するのは中央政府でも、企業を直接管理するのは地方政府という二重構造になっているからだ。 財政難に陥っている地方政府は規制を厳しくして企業が倒産すれば税金を徴収できなくなるし、天下り先もなくなる。癒着関係を維持するしかないのだ。
 事態を一層深刻にしているのは食品業界の業績悪化。給料は産業別でもっとも低い。もともと利益が出ずらいのに原油高、人民元切り上げ、天災による不作が続いている。一段のコスト削減を迫られ、効果が出ないなら偽造するしかない。
 一方の日本。農水省が頭を抱えているのが農業の後継者問題。少子高齢化で跡継ぎが不足、ますます自給率の減少が懸念されている。それでも日本の農家を守る戦略として力を入れたのが、「中国市場への輸出」であった。実際に日本の農水物の輸出先の第一位は、中国(香港を含む)で06年は約1210億円で米国の2倍の金額である。
 中国が輸入してくれるなら、政府は中国からの輸入も歓迎せざるを得ない。中国向け輸出に依存する限り、中国産農水物の規制を強めたり、輸入禁止にするなどできるはずもない。
 中国の農水物の輸出先国も日本が第1位。食品問題が発生してから輸出量が減少しているため、すでに中国は経済成長中のアセアン諸国に注目先を変更しているが、日中の持ちつ持たれつの構図が急に壊れることはない。日本農業再生の抜本的対策なくして、食の安全は確保できない状況が続くのである。