格差が拡大
 このところの家計支出に変化がみられる。平成5年から平成18年までの消費支出を分析すると移動電話通信料などの交通・通信、光熱・水道などが上昇し、その他の消費支出、被服及び履物、食料などが低下している。つまり、必需品に費やした分だけ贅沢は必然的に抑えなければならない現実が伺える。
 (特に塾・習い事、食費、衣料費、こづかい、子供のための預貯金や保険などが含まれる子育て費の割合は2007年で26・2%だが1993年の33・4%をピークに下落が続き2007年は最低となった。(野村証券が首都圏と京阪神に住む高校生以下の子供がいる700世帯にアンケートを行った結果)。低所得者層は生活費が苦しくなり、子供のために費やす金額を減らしていることが分析できる。
ところが富裕層は違う。年間収入階級別に分みると、教養娯楽、教育費は700万円以下の層で低下しており、それ以上の年収の層では教養娯楽、教育費ともに上昇している。年収300万円未満の低所得者層と年収1000万円以上の高所得者層を比較すると、学校教育と補習費用にかける金額は5倍、こづかいは3倍、遊び・レジャーや習い事、携帯電話通話料は2.5倍も開きがある。逆に、おもちゃに費やす金額は半分近くの金額で少ない。
年収別高額商品の動向
 日本は世界第二位の富裕層大国、100人にひとりが1億円以上の資産を持ち全世界の約16%を占めている。納税状況から分析すると年間所得2000万円を超える人数は、バブル崩壊後の1990年から2005年までに1.9倍に増加しており、その市場は10兆円ともいわれている。中でも1億円以上の年収がある富裕層と5000万円以上の年収の準富裕層がお金を費やしているのは衣類や教育のほかの①国内旅行(71.6%)②海外旅行(63.7%)③書籍や雑誌など読書、映画・音楽鑑賞(52.9%)である。
 富裕層の職業には株式保有率の高い企業の役員や経営者、不動産所有者、医師や弁護士などである。このところの特徴はIT企業やベンチャー企業の創業者で株式公開などで資産を拡大した層がいる。彼らは弁護士や美容関連の医者など専門分野で活躍・拡大するなどプロフェッショナルリッチやIT関連企業の勝ち組、DINKSや負け組みの30代~40代の独身などに分類される。スポーツカーなどを購入、自分の楽しみと余暇に費やすのが特徴である。彼らはまた①ホームパーティを開くなど人脈のために金を使う②他人よりも特別感・優越感が味わえるサービスのある高級エステや美容などに使う。10万円のスーツなど軽くて着やすいなどこだわりがある③新しくできたばかりの外資系ホテルなど最新の情報を手に入れるために使う。④自己啓発のための習い事などに積極的に時間とお金を費やす⑤欲しいものができたらそのために働き、他人との比較、見栄のために派手に使う傾向にある。競争社会を生き、自分の欲しいものはすべて手にすることができたバブル時代の華やかさを知っているこの層はその勢いがとまらない。高度成長時代に土地価格の上昇によって資産を膨らませたり、いわゆる代々の跡継ぎや財閥層などはバブル崩壊によって合併統合や不動産価格の崩壊により7割が消えた。税金控除のため、経費で使える消費をしていた層とは違う現代のおもいきった消費の仕方である。
 一方バブル崩壊後の今の20代は、欲もなく消費する楽しみよりも堅実で一人で部屋にいる時間が欲しいト考える世代である。自動車に乗らない、旅行に行かない。マンションも購入しない、それで不満とも感じないのである。
こだわり贅沢品の消費
 各層によってその消費の仕方に差はあるものの、消費支出が増えた人は賃金が増えた人である。賃金がなかなか上がらない人が多い中で上がった人は、周囲よりも自分だけが増えたという満足感から消費行動に移る。消費には2種類ある。生活必需品とライフイベントにともなう支出である。生活必需品は毎月の給料の中から支出するのが理想であり、結婚式や自動車を購入するなどのイベントはボーナスから支払うのがベストだ。
 しかし急に年収が増えた人は、買い物の仕方を知らない人が多い。例えば新築のマンションへこだわり一次募集で一等地に数件投資している人がいる。しかし新築のマンションは必ず下がる。また一次募集ではもっとも高い価格で購入する例が多く、資産運用としては不利になることが多い。
 これからの買い物、特にぜいたく品を購入するには、資産の価値が下がらないかどうかを第一に見極める必要がある。例えば最近は外車が安くなっているが、特に数年間使用した中古なら日本車よりも安くて手に入ることもある。部品の調達に時間がかかるマイナス面もあるが、日本に20台もないような外車を選ぶと数年後、価格が上がる例も多い。同様に楽器やステレオなどもそうだ。
 買い物がストレス解消になるといわれているのは、自分なりのこだわりが満たされるからである。しかし本物のこだわりとは=希少価値が高くなる、ことであり、今後もその価値が期待できるのか、見込めるかどうかがポイントとなる。それには世界でも買い物下手の日本人は本当の意味で消費者の目を肥やすことが必要である。