日本マクドナルドとトヨタ自動車が「残業代を払うことにした」と発表しました。でも、これまでの経緯を考えると、首をかしげてしまいます。
「名ばかり管理職」問題に揺れるマクドナルドは、8月から新しい報酬制度を導入し、店長にも残業代を支給するとしています。しかし裁判で争われている“未払い”の残業代は別問題で、払うつもりがないと言います。これまでの残業代を全店長に払うことになったら、膨大な額になるからです。
しかも、新報酬制度で店長は大喜びかというと、必ずしもそうではなさそうです。残業代と成果に応じた報酬を組み合わせて支払う代わりに、店長手当にあたる従来の職務給を廃止するからです。結局、給料の額はあまり変わらないようです。
一方、トヨタは「QC活動」に対する残業代を無制限に支払うと発表しました。現場レベルの品質改善活動であるQC活動は、自主的な“サークル活動”とされ、驚いたことに、最大でもたった2時間分の残業代しか支払われていなかったのです。1日2時間ではありません。1カ月で最大2時間です。
トヨタでは、国内生産現場の従業員約4万人のほとんどがQC活動に参加しており、1時間分の残業代は全社の人件費にすると1億円程度だそうです。今年3月期連結で1兆7178億円の最終(当期)利益は、こうした努力による金額でもあったのです。
トヨタはQC活動の残業代を無制限にする代わりに、活動自体を抑制すると言っています。高度経済成長期には製品の品質向上に貢献したQC活動ですが、いつしか上司からの押しつけに変質し、単なる「サービス残業」以外の何物でもなくなっていたようです。
「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)を向上させるために、いま改善が求められるのは、制度疲労を起こしている組織や業務システムのあり方ではないでしょうか。