ストレスを外に向ける人の極端な例が秋葉原の殺傷事件だとすると、心の負のエネルギーが内に向かうと鬱病(うつびょう)になります。昨年の自殺者数は過去2番目に多く、その原因の2割近くが鬱病とみられています。
中でも30代の鬱病が増えているそうです。難しい仕事が増える時期。しかも自分では20代とあまり変わらないつもりでも、体力は確実に衰え始めています。残業続きで判断力もなくなるくらい疲れがたまった状態の人が鬱病と診断されています。疲れがとれない、会社に行くのがおっくう、同僚から「元気がない」と言われる、などのことがあったら、一度医療機関を受診してみてはいかがでしょう。
鬱病になりにくい人は、自分を素直にほめることができる人、小さな幸せを喜ぶことができる人。そして会社の中で自分の仕事や立場について本音で話せる人がいること。
私はメンタルヘルスの専門家ではありませんが、「こんな仕事をしている自分は本当の自分ではない」と感じている人は、少し危うい気がします。仕事の疲労感の中で、30代は自分を素直に受け入れられなくなっているのかもしれません。
気がめいってしまう前に、何よりも気分転換が必要です。運動や趣味など楽しみがあれば一番ですが、若い人なら、これまでの好みとは違ったタイプの異性とつきあってみることも気分転換になるかもしれません。
同じように、思い切って仕事の内容をがらっと変えてみることもいいかもしれません。しがらみで身動きがとれなくなっていると感じたら、上司に相談して持ち場を変えてもらうことも大事。そこまででなくても、気重な仕事の途中で雑用処理を差し挟んだり、とりあえず机の周りを掃除してみたりすると、案外すっきりするものです。
ただの過労だと思っていたのが実は鬱病だということもあります。慢性化した疲労倦怠(けんたい)感は注意信号。自分なりの気分転換をしてみてください。
(生活経済ジャーナリスト・嘉悦大学短期大学部准教授)