異業種に転職するコツは「経験がないから」とあきらめず、共通点を見つけることです。どんな仕事でも1つは共通点があります。それを見つけられれば最大の武器になります。
証券会社の営業から出版社の営業企画部に転職した知人がいます。一見、異なる業種に見えますが、彼は「売っていたものが株から本になっただけ」と言い切ります。高卒で中小の証券会社の窓口業務から、航空会社の客室乗務員に転職した清水恵子さん(仮名)の場合、無理やり共通点を探したといいます。
探すポイントは、現在の仕事内容を30に分解してみること。例えば証券会社の仕事なら、経済動向の調査、株式市場の予想、企業のIR、営業-といった具合。さらにクレーム対応もありますね。彼女は客観的に分類できるよう、異業種で働く友人に協力してもらい、自分の業務内容を30分類しました。
英語ができなければ客室乗務員になれない、という常識は気にせず、これまでの業務との共通点を必死に探しアピールしたとそうです。「面接では『証券会社では1日30人、1カ月で100人以上のお客さまの相手をしました。私はクレーマー対策に世界一たけていると自負しております。機内ではどんなクレームにでも対応できる力を持っています』と必死で自信があるように見せました」と打ち明けます。自信を示すための立ち居振る舞いにも気を付けたそうです。(1)座っているときは、相手が目をそらすまで目を見続ける。(2)脇は閉めず、腕は20センチほど体から離す…。
これは、英語を覚えるなど実力を磨く努力より、共通点を見つけ、説得する努力。英語ができない欠点より、必死で見つけた自分の長所をアピールした努力です。転職は実力だけではなく、業務の共通点を「適性=長所」として納得させるプレゼン力も大事です。これが転職先の会社での「率先力」として期待されるのでしょう。
(生活経済ジャーナリスト・嘉悦大学短期大学部准教授)