個人主義で競争心の強いビジネスパーソンが多い中国では、自己の昇進や年収アップを目標に転職を常に意識しながら働いています。それゆえ、個人のがんばり、つまり個々の成長は、企業においても人的資源として大きな戦略となっていると言えます。13億人が住む中国のこういった意識が中国経済の成長をけん引しています。
しかしながら、現在はサブプライムローンの影響が世界規模で拡大し、将来の経済に大きな不安を抱えています。実際にサブプライムローンの影響による世界的な金融危機によって、中国株式市場も低迷しています。
とはいえ、この9月の中国は貿易黒字が293億ドルになり、8月に続いて過去最高を示しています。米国経済は低迷し、米国向け輸出は減少しましたが、EU向けの輸出が伸びているため好調です。
月次の貿易収支は、2月以来7カ月連続で増加し続けています。このまま維持するかどうかは疑問ですが、世界中が経済パニックに陥っていることを考えると、中国経済はそれほどひどい状態ではないと言えるでしょう。
現在のサブプライムローンにおける金融業界への影響は、中国の4大国有銀行では、それぞれ全体の資産の数%の影響しか受けていません。実は、現在の中国株の低迷は、サブプライムローンの影響というよりも北京五輪の後の影響といえます。
とはいえ、米国向けの輸出は減少傾向にあり、また米国からの未払い金額が大幅に増えていることから、経済としての影響が避けられないのも確かです。
中国は、すでに数年前から輸出先を米国からEUやASEAN諸国向けに本格的に軌道修正していました。そう考えると、中国は先見の明があったといえます。米国経済がいずれ低迷するだろうということは日本でもささやかれていましたが、中国のようにすぐに実行できた国はそれほどにありません。
私は、世界的な金融危機の中で中国が持ちこたえている背景には、中国のアナリストやエコノミストたちの意識の違いがあると考えています。
中国のアナリストやエコノミストは、中国の経済データを信用していません。信ぴょう性が低い数字が多いために、調査に基づいた厳密な分析ができないからです。
また、株式市場ができてまだ18年ほどの歴史しかなく、過去の経験を基にした予測も困難です。さらに、中国経済は乱高下が激しく政策に連動する独特の傾向があるため、先進国などの株価の動きもあまり参考になりません。では、どう考え、どう分析しているか。
中国のアナリストは、数字などに依存した分析ではなく、もっぱら政策の噂を突き詰めているのです。中国の株式市場は日本のように経済に直結しないので、細かい経済指数や決算発表などによって大きく動くことはありません。政策の動きだけを追っていれば、ある程度の分析が可能です。
現場の噂も重要です。中国の株式市場は個人投資家が9割以上を占めているため、現場の噂に左右されることも多くあります。
もちろん米国経済や世界の情勢を知っておく必要はありますが、ファンダメンタルとしての経済動向の調査よりも、直接、現場を足で見て回って個人投資家の感触をうかがう方が大事なのです。投資家の間では、常に様々な政策の噂が耐えません。株価だけでなく産業にも直接的に影響を及ぼすため、多くの人が政策に注目しているのです。
中国では、アナリストだけでなく一般のビジネスパーソンも、党大会(日本の国会に当たる)の情報を非常に気にしています。日本では投資家でも通常の国会の内容に敏感でない人も多いようです。政策に敏感だからこそ、様々な面において中国は先手を打つことができたのかもしれません。