●「テロ」ではなく、会社への「嫌がらせ」!?
 検証の結果、基準値の3万4500倍のジクロルボスが検出された冷凍インゲン事件。警視庁は人為的な混入の可能性をにらんで捜査を開始しているが、不気味なのは犯人の動機だ。毒物は中国国内で混入された可能性が高いが、1月に起きたメタミドホス入りギョーザ事件も未解決。その後フラルタドン入りチキンカツ事件(5月)、メラミン入り牛乳事件(9月)など、中国産食品への毒物混入が続いている。「無差別テロか!?」なんて見方もあったが、中国事情に詳しいジャーナリストの青木通氏はこう言う。
 「もし中国で意図的に殺虫剤が混入されたのなら、労働条件に不満な工場労働者が恨みを晴らすためにやった可能性があります。中国の会社は経営陣と労働者の賃金格差が数十倍から数百倍もあり、労働者はいくら努力しても出世できない。しかも宿舎では大勢が雑魚寝させられ、1人当たり畳1枚程度の広さしかないという劣悪な環境。毒入りギョーザも今回のインゲンも、会社に不満を抱く労働者がやったような気がします」
 だとしたら、この手の事件は今後もっと続発する。なにしろこんな大事件が起きても経営陣は待遇を改善するどころか、逆に労働者への監視と締め付けを強めており、労働者の不満は募るばかりというのだ。 
 経済ジャーナリストの柏木理佳氏(嘉悦大准教授)が言う。
 「物価は上がる一方なのに給料は上がらない。会社は勝手に労働者をクビにし、離職したら最後、再雇用のチャンスはない。
 しかも北京五輪で大金を使いながら国民の暮らしは二の次。こんな政治に労働者の怒りは爆発寸前です。彼らの一部が“自分たちは一生報われない”と諦めて自暴自棄になり、中国政府を窮地に陥れるために有害物質を混入した可能性は大いにある。日本の政府や企業が中国に待遇改善の働きかけをしないかぎり、混入事件は後を絶たないと思います」
 日常生活のありとあらゆる部分に「made in China」が入ってきている現状では、中国製のボイコットは不可能。犠牲者が増えてからでは遅いのだが……。 
(日刊ゲンダイ2008年10月17日掲載)