就職の内定取り消しが続出しています。私が教える学生たちも入社式までびくびくして待機しています。
内定を取り消した業種は不動産、製造業、飲食・宿泊業などで多いようです。取り消された学生・生徒は当然、ほかの企業の内定を断っていたわけですから大変です。就職活動に際しては、産業動向を見極めることも大切ですが、今回の金融危機による影響は、内定が出た時期には予測は難しかったでしょう。
厚生労働省が全国のハローワーク(職安)を通じてまとめた内定取り消し件数は、先月25日現在で大学生などが302人、高校生が29人。その後もどんどん増えており、深刻な状況になっています。ある企業では内定者に30万円を支払って取り消したというから驚きます。
同省は内定取り消しを受けた大学生などの相談に対応するため、事業主団体への要請や大学とハローワークの連携強化などを強化、各都道府県の学生職業センターに「特別相談窓口」を設置しました。
私もかつて内定をもらった企業から「入社時期を半年間遅らせる。場合によってはさらに遅れる可能性がある」という通知を受けたことがあります。結局、半年後に入社できるまで、アルバイトなどをして待機していました。
企業は、経費削減としてすぐに思いつくことが給料カットです。入社していない学生の内定を取り消すことは給料の高い正社員をリストラするより簡単でしょう。
しかし、会社にとっては、優秀な人材確保の道筋を失い、継続的な人材育成が途切れるわけです。人件費の安い若手人材が手薄になることも考慮するべきです。
内定取り消しは本当に得策でしょうか。待機期間の設定や会社全体の経費削減を考えるのが先なのでは?
(生活経済ジャーナリスト・嘉悦大学短期大学部准教授)