私は海外から帰国したばかりの頃、知りあう男性に挨拶と同時に年齢を聞かれることが多くありました。そして、日本で就職活動を始めると、女性が働く場合は、年齢の壁がどうしてもつきまとうことを痛感しました。
実際に働き始めると、さらにショックを受けました。多くの企業が、仕事ができる30歳以上の女性より、仕事ができなくても、若さと素直さと美貌を持つ30歳以下の女性を重視する傾向があることが分かったからです。
この傾向は、海外ではむしろ逆です。女性の多くは、年齢を上に見せた方が信頼されると感じています。特に中国では、若さだけで日本のようにちやほやされることはまずあり得ません。
私は以前、働く女性の就労意識を調査するために、女性特有の職業であるフライトアテンダントに対して、アンケートとヒアリングを実施したことがあります。その結果、日本人と中国人の就労意識の差が明確に出ました。
■ キャリア意識が明らかに違う
日本の航空会社に勤務しているフライトアテンダントは、体力の限界などから平均勤続年数が短いことに対して、将来を不安視している人がとても多いのが特徴的でした。ですが、習い事は趣味や結婚準備のためのものばかりで、具体的な転職に役に立つことをしている人はほとんどいません。
自身の能力不足を自覚しながらも、「仕事の時間が不規則」といった言い訳をしながら約9割の人が「自主的に勉強をしていない」「したくてもできない」と答えています。
一方、中国人のフライトアテンダントは、パソコンや翻訳など現在の職業に不足しているスキル、転職に直接結び付く勉強をしている人がとても多く、日本人よりキャリア意識、リカレント教育の意識が高い傾向が見られました。
■ 一生働くことを考える中国人と、短期的な展望しかない日本人
そもそも日本人と中国人では、就職に対する意識から大きく違います。中国人フライトアテンダントは、「体力が続く限り一生働きたい」「給料とステイタスがさらに高い職業が見つかるまで働き続ける」という人が多く、「出産しても育児休暇を取って復帰したい」という考えも一般的です。
一方の日本人フライトアテンダントは、「結婚や出産で退社したい」「5年ほどで辞めたい」と、一生働くという意識がほとんど見られませんでした。
働くことを「一生」ととらえるか、「一時的」ととらえるか。私が調査したアンケートからは、日本人女性は「一時的」ととらえることが非常に多いことが分かりました。女性特有の職業だからというわけではなく、この結果はほかの職業においても同様に言えることと思います。
働くことを真剣に考える中国人女性のキャリア意識、そして女性を雇う側の中国企業の雇用意識については、見習うべき点がたくさんあるのではないでしょうか。
■ 容姿端麗を気にしだした中国企業
ただし、中国の女性雇用意識も少しずつ変わってきています。これまで、中国の航空会社は、フライトアテンダントの採用基準を「高校卒業以上」「容姿はさほどこだわらない」としていましたが、それが学歴や容姿を判断基準で重視するようになってきたのです。
例えば、中国南方航空は、2008年の北京五輪に華を添えた美女コンパニオン100人を客室乗務員として採用しました。年齢は18~25歳、身長は168~178cm、体型や骨格も厳しく審査され、肌の状態や教養レベルまでもが厳格に規定されています。これは、保安要員としての安全性より、外見を重視してきたとも言えます。
学歴に関しても、中国でも大学進学率が高まってきているため、日本のように学歴インフレが起こりつつあります。
中国人は働いている女性の割合がアジアで最も多い国です。女性特有の職業において若さを重視する傾向は、きっとほかの職業においても浸透するでしょう。今後、日本のように若さ、美貌を重要視されることがないように祈るばかりです。