ダイヤモンドオンライン 7月29日 柏木理佳
ビジネスで勝つ 中国人との付き合い方
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自分を過大評価し昇給を求める中国人への説得の仕方は?

中国人労働者が自殺ショーで賃上げ交渉する背景

「中国人は『給料上げろ』って自己主張ばかりで困るよ」
中国人を雇用している日系企業の管理職の悲鳴をよく耳にする。
しかし、中国では、自分を過大に評価しアピールしなければ、残業代未払いどころか低賃金で不当な扱いを受け続けている例が多いのも事実だ。
近年、中国で流行していることといえば、自殺ショーで賃上げ交渉すること。
先日も広州で中小規模の不動産会社との賃金交渉による労働者の自殺ショーがあった。入社時は「給料+歩合」を約束をしたが、金融危機後は、歩合を半分に下げられたのだ。
従業員がマンションの屋上の端に立ち「給料を上げろ、さもないと飛び降りるぞ」と大声でわめき散らした。いつも強気で傲慢な経営者も、このときば かりは違う。警察や消防関係者に周囲を取り囲まれれば、意外に簡単に折れるものだ。経営者にとってみると、会社の評判も悪くなり、公安局に目をつけられた ら今後の仕事がしづらくなるためである。
中国ではここまでしなければならないのは、従業員の扱いがひどいからなのである。

労働組合の土壌がなく個人の交渉力が強い

中国では従来、日本でいう労働組合、労働協約といった存在がほとんどなかった。「集団契約規定」がようやく2004年に公布され、広東省などでは 「賃金集団協議制度」(従業員の代表が、企業側と公平な協議を行い賃金の分配制度や金額、支払い方法、調整規則などを取り決める制度)をとりいれた国有企 業が増えてきた。しかし、それまでは企業との交渉は全部個人がしなければならなかったのだ。
さらに、中国の経済成長率は高いが、同時に物価上昇率も高い。都市部の社会保障局によると3%から上限16%が賃金上昇のガイドラインとされているため、多くの従業員は賃金は増えて当然だと考えている。
もともと競争心が強い中国人は、ライバルである周りの同僚より、自分のほうが多く働いているし、能力もあるという意識を持っている。そのため、周囲の賃金上昇率よりも自分が高い賃金がもらえないと、必要以上にショックを受け、仕事のモチベーションが一気に下がる。

とにかく具体的な数字を示して納得させる

しかし、だからといって会社側も社員に言われるがままに給料を上げられない。中国人に限らず日本人でもそうだが、新人類社員の中には、どうみてもほとんど何も仕事をしていないのに、自己評価と自己主張ばかり強い人は少なくないのだ。
そこで、中国人を部下に持つ多くの日本人上司が陥る失敗が、「給料を上げるのは妥当ではない」「昇給に見合う仕事をしてない」などと、不明確な説明をすることである。
特に日本企業は、定量的な評価ではなく、人間関係など不明瞭な方法によって昇進・昇格・昇給がなされることがいまだに多い。「あの日本人は僕より仕事してないのに、なぜ給料があがったのか?」と、中国人社員に言われかねない。
「日本は景気が悪く、日本企業の多くが業績が悪いので、理解してください」などという曖昧な説明では、彼らには納得されないだろう。中国の日系企業ならば、なぜ中国にまで支店を出しているのに業績が悪いといえるのか、などと不信感を持たれる。
では、そうした場合、どうすればよいのか。まずは会社の給与システムを明確に説明しよう。たとえば、「年俸制の人には1年に1回見直しをしている。しかし業績を上げない限り、給料はアップしていない」などと給与規定に明記する。
さらに、業績を上げるという意味についても、「給料アップに値する業績とは、新規の顧客を3社増やし年間の売上げが1000万円以上に達し、なお かつ経費を200万円以下でおさえた人」などと明確にすることだ。そして「年間1000万以上~3000万円を売り上げた人は、段階的に500万円まで、 支給を増額する。売上げ1000万円から1500万円までは年収30万円アップとボーナス100万円(ただし2回にわけて)を支払う」など、細かい部分ま で具体的に明示しておくことが必要である。
能力に応じた昇格システムがこれくらい明確なら、中国人にとっても平等性が高まり、モチベーションがアップされる。長期的に働きたいと思わせる効 果にもつながり、いい人材を残すためにも効果的であろう。とにかく、あうんの呼吸で分かり合えるなどといった日本人特有の曖昧さは通用しないのだ。