ファンケル健康院出版 百楽 柏木理佳の熟年世代のマネー講座 第14回
今、注目の外国株。流れを把握して、上手に資産を殖やそう!
日本株の低迷が続き、経済はデフレに苦しんでいる一方、新興国ではインフレやマネー流入の過熱が懸念されています。マネーの行き先は海外へ流れている中、インフレ・中東情勢により人気が高かった新興国の株が不安視され、逆にこれまであまり注目されていなかった先進国へ流れています。そこで今注目されている外国株の現状、魅力とリスクについて、私、柏木理佳がまとめました。
日本株における個人の取引が減少しています。昨年の個人の個別株の売買代金は、前年から2月中旬までで18%(約27兆円)も減少しています。株より安定性の高い国債が注目されていましたが、その評価も下がっています。今マネーはどこに流れているのでしょうか。
新興国からマネーはどこへ?
これまで過剰なまでも注目されていたのが新興国です。IIF(国際金融協会)は、2012年には、新興国市場に流入する民間資本が1兆ドルを上回ると予測しています。昨年、アジア・太平洋地域にある主要取引所13ヵ所の株価指数の中では、インドネシア以外にモンゴル、スリランカ、バングラディッシュ、エストニア、ウクライナ、フィリピン、リトアニア、アルゼンチン、ペルーの株価インデックスは40%以上と驚異的な上昇率となりました。上がりすぎている株価を抑制するため、すでにブラジルでは「海外からの債券投資には『金融取引税』」を、インドネシアでは「海外からの短期資金の調達に上限」を、中国、チリ、コロンビアでも利上げするなど過熱したマネーの流れを抑制するため、規制に踏み切っています。新興国が注目されていた理由は、先進国にない活発な市場と成長率です。人口構成や、人口の多さにともなう消費力や豊富な資源です。
中国、ロシアに注目
ところが、中東情勢やインフレにより新興国から徹底している投資家が増えています。新興国の21市場のMSCI新興国市場指数では年初より2月中旬にかけて4%低くなりました。インドのセンセックス30種指数株価が10%、インドネシアのジャカルタ総合指数とタイのタイ株主要指数SETINDEX(SET)株価は7%下落、ブラジルのボベスパ指数は年初来高値から2月中旬にかけて7%下落しました。しかし、引き続き大国として目が話せない国もあります。それは中国とロシアです。加えて、政治的に安定し、懸念材料も出尽くしたことで注目されているのが欧州、特にドイツです。
まず、中国株は、代表的な指数である上海総合指数が金融危機以降、他国に比較し、いち早く持ち直し現状にいたっています。米国経済に連動しないのが中国株の強みです。日本で中国株として販売されている深浅市場や香港市場の総合指数も比較的安定しています。中国企業は人民元切り上げにともない時価総額も増え大きく成長し、海外への買収も促進しています。バブルを懸念する声もありますが、中国は日本と違い国土が広く、地方まで経済が成長するには2020年まではかかるといわれています。これから中国株に投資するなら10年単位で長期的に見ることです。
政治的リスクがつきものの新興国ですが、それでも中国が注目されている背景には、2012年から本格的に政権が入れ替わるためです。習近平を始めとする若い世代へ政権が入れ替わることで、先進国と同じような市場経済への移行が期待されています。最近では死刑の適用対象68が詐欺や窃盗など13が適用外になりました。3月の全人代(日本の国会にあたる)では、貧富の格差の是正、インフレの抑制、大量の安い労働者から高い技術力を誇る労働者への産業構造の移行などが、少しずつですが2017年にかけて民主化への流れとともに改革されます。
一方、原油生産高が世界一で、天然ガスの生産量・埋蔵量ともに世界一を誇るのがロシアです。上場企業の多くが資源関連企業のため、原油が高騰すれば株価が上がり、下がれば連動して下がる傾向にあります。
ロシアの代表的な企業にはガスプロムルクオイルがありますが、いずれも石油会社です。ロシア株の代表的な指数であるRTS株価指数も金融危機後、株価は元に戻り他の新興国より比較的安定しています。
中国株、ロシア株のリスクを回避するには?
新興国と違いリスクがあると懸念する人も多いですが、リスクは為替と政治です。政治的リスクを回避するには、投資した国の政治情報を収集することですが、新聞を読み、証券会社やアナリストが警戒予告してからでは遅いかもしれません。その国の発言力のある人は誰なのかを調べ、注視しておくことが大事です。例えば、中国ならば中国人民銀行の総裁である周小川の発言は、人民元への影響力があります。世界から人民元切り上げが注目されているため株価にも影響がでるため、彼の発言には注意する必要があります。逆に外務省姜瑜や温宝家などの発言は、社会的な情勢に対する発言であり、急激に株価に影響を与えることは少ないでしょう。
為替リスクの回避は、毎日、為替をチェックして一喜一憂するのではなく、まず選ぶときに、米ドルに対して連動している国の為替なのか、そうでないのかを調べましょう。米ドル関連の資産を持っている方は、非連動の国を選ぶことです。米ドルが下がっても新興国の株は上がるというように、分散投資ができます。次に、売却したときは日本円で受け取るのかドルでも受け取れとるのかを確認しておきましょう。換算する必要がなければ為替リスクにさほど動揺することはありません。さらにロシア株にとってチェックする大事なポイントは、原油など資源の価格です。特にロシアでは原油に連動していることもあり、原油が急落した場合は株価のチェックを怠らないことです。
新興国から欧州へ
一方で、これまであまり経済成長率の高さが見込めず、株式市場においても注目されなった先進国への注目が高まっています。ドル機軸通貨からユーロに注目が集まっているように、株式も米国より欧州の株式市場が注目されています。米国では、デフレ化しないように経済支援を強化していますが、欧州はそれより財政を健全化することを重視しています。
欧州は全体的にはあまりよくありませんが、それでも悪いものはすでに出尽くしています。米国と違い財政を健全化させることに注目している点は、今後の経済成長が期待できます。
欧州株の強さ、ユーロの強さ
欧州主要企業600社で構成されるStoxx欧州600指数やユーロ・ストックス50指数は、上昇傾向にあります。ユーロストックスは浮動株に基づく時価総額加重平均指数で欧州経済通貨同盟 (EMU) 加盟国の優良50銘柄で構成されていますから、欧州経済の強さを意味します。
欧州の魅力は、なんといってもユーロの強さです。1999年、欧州11カ国にユーロが導入されてから、世界の外貨準備高に占める割合でが日本円を大幅に上回るようになりました。米ドルに次ぐ世界第2位の基軸通貨となっていることです。2011年現在で17ヵ国が導入しています。もし、今後イギリスやスウェーデンなどが加われば、ユーロが米ドルへ代わる通貨として期待も高まります。
ドイツの経済は、東西統合以来の成長
ドイツ経済の本格的な復活年になったといえます。欧州のGDPの3割を占めるドイツは、昨年のGDP成長率は3.6%増、1992年の東西ドイツ統合後の最高値を記録しています。OECDは、今年のGDP成長率を2.5%増、再来年は2.2%増と予測しています。
ドイツはもともと輸出主導型の経済ですが、昨年はユーロ圏外の輸出先との関係により成長しています。でも、それだけではありません。
経済成長の牽引役は、輸出から内需へと移行しているためです。昨年のGDP成長率の寄与度は、純輸出+1.1ポイント(輸出14.2%増、輸入13%増)に対して内需は2.5ポイントとなっています。失業者数も18年ぶりに300万人を下回るほど改善されたこと、住宅価格が安定したこと、賃金が2%上昇したことなどが消費を活性化させているのです。
ドイツ経済のリスク
昨年の第3四半期までの中国向け輸出は前年同期比で46%増加したことは、輸出を拡大し、内需にもつながりました。しかし、中国経済を始め輸出国が金融引き締めや緊縮財政で需要が減少することもあります。それにより賃金が再び低迷すること、また、国内の食料品価格の上昇が、消費動向が低迷することもあるでしょう。
GDP成長率は1%から3%あまりと新興国に比べると上昇率が低い欧州では株価上昇率も高くは望めません。しかし、新興国の場合は、株価上昇率も高いかわりに、下落率も高く、ハイリスクハイリターンというマイナス面もあります。安定性の高い国に投資するか、成長性の高い国に投資するかは、本人の性格や投資方法と資産内容によりますが、定年後ならば7割ほどは安定性の高い国への投資がいいでしょう。
外国株の買い方 外国株を取り扱う証券会社
外国株というと投資信託を思い浮かべる方が多いと思いますが、一株当たりの株価が安いため個別銘柄を購入する投資家も多いようです。中国株の個別銘柄は東洋証券、内藤証券、東海東京証券で、香港株は大和証券や松井証券などでも取り扱っています。ベトナム株を取り扱っている証券会社は岩井証券、アイザワ証券、日本アジア証券、キャピタル・パートナーズ証券、ニュース証券などです。ブラジル株はニュース証券が個別を取り扱っています。楽天証券、SBI証券、大和証券ではADR(米国預託証券=米国市場で外国企業が発行する証券)として購入できます。欧州株の個別銘柄を扱っている証券会社は、岡三證券、東海東京証券などがあります。それぞれの証券会社で得意な外国株があります
今、注目の外国株。流れを把握して、上手に資産を殖やそう!
日本株の低迷が続き、経済はデフレに苦しんでいる一方、新興国ではインフレやマネー流入の過熱が懸念されています。マネーの行き先は海外へ流れている中、インフレ・中東情勢により人気が高かった新興国の株が不安視され、逆にこれまであまり注目されていなかった先進国へ流れています。そこで今注目されている外国株の現状、魅力とリスクについて、私、柏木理佳がまとめました。
日本株における個人の取引が減少しています。昨年の個人の個別株の売買代金は、前年から2月中旬までで18%(約27兆円)も減少しています。株より安定性の高い国債が注目されていましたが、その評価も下がっています。今マネーはどこに流れているのでしょうか。
新興国からマネーはどこへ?
これまで過剰なまでも注目されていたのが新興国です。IIF(国際金融協会)は、2012年には、新興国市場に流入する民間資本が1兆ドルを上回ると予測しています。昨年、アジア・太平洋地域にある主要取引所13ヵ所の株価指数の中では、インドネシア以外にモンゴル、スリランカ、バングラディッシュ、エストニア、ウクライナ、フィリピン、リトアニア、アルゼンチン、ペルーの株価インデックスは40%以上と驚異的な上昇率となりました。上がりすぎている株価を抑制するため、すでにブラジルでは「海外からの債券投資には『金融取引税』」を、インドネシアでは「海外からの短期資金の調達に上限」を、中国、チリ、コロンビアでも利上げするなど過熱したマネーの流れを抑制するため、規制に踏み切っています。新興国が注目されていた理由は、先進国にない活発な市場と成長率です。人口構成や、人口の多さにともなう消費力や豊富な資源です。
中国、ロシアに注目
ところが、中東情勢やインフレにより新興国から徹底している投資家が増えています。新興国の21市場のMSCI新興国市場指数では年初より2月中旬にかけて4%低くなりました。インドのセンセックス30種指数株価が10%、インドネシアのジャカルタ総合指数とタイのタイ株主要指数SETINDEX(SET)株価は7%下落、ブラジルのボベスパ指数は年初来高値から2月中旬にかけて7%下落しました。しかし、引き続き大国として目が話せない国もあります。それは中国とロシアです。加えて、政治的に安定し、懸念材料も出尽くしたことで注目されているのが欧州、特にドイツです。
まず、中国株は、代表的な指数である上海総合指数が金融危機以降、他国に比較し、いち早く持ち直し現状にいたっています。米国経済に連動しないのが中国株の強みです。日本で中国株として販売されている深浅市場や香港市場の総合指数も比較的安定しています。中国企業は人民元切り上げにともない時価総額も増え大きく成長し、海外への買収も促進しています。バブルを懸念する声もありますが、中国は日本と違い国土が広く、地方まで経済が成長するには2020年まではかかるといわれています。これから中国株に投資するなら10年単位で長期的に見ることです。
政治的リスクがつきものの新興国ですが、それでも中国が注目されている背景には、2012年から本格的に政権が入れ替わるためです。習近平を始めとする若い世代へ政権が入れ替わることで、先進国と同じような市場経済への移行が期待されています。最近では死刑の適用対象68が詐欺や窃盗など13が適用外になりました。3月の全人代(日本の国会にあたる)では、貧富の格差の是正、インフレの抑制、大量の安い労働者から高い技術力を誇る労働者への産業構造の移行などが、少しずつですが2017年にかけて民主化への流れとともに改革されます。
一方、原油生産高が世界一で、天然ガスの生産量・埋蔵量ともに世界一を誇るのがロシアです。上場企業の多くが資源関連企業のため、原油が高騰すれば株価が上がり、下がれば連動して下がる傾向にあります。
ロシアの代表的な企業にはガスプロムルクオイルがありますが、いずれも石油会社です。ロシア株の代表的な指数であるRTS株価指数も金融危機後、株価は元に戻り他の新興国より比較的安定しています。
中国株、ロシア株のリスクを回避するには?
新興国と違いリスクがあると懸念する人も多いですが、リスクは為替と政治です。政治的リスクを回避するには、投資した国の政治情報を収集することですが、新聞を読み、証券会社やアナリストが警戒予告してからでは遅いかもしれません。その国の発言力のある人は誰なのかを調べ、注視しておくことが大事です。例えば、中国ならば中国人民銀行の総裁である周小川の発言は、人民元への影響力があります。世界から人民元切り上げが注目されているため株価にも影響がでるため、彼の発言には注意する必要があります。逆に外務省姜瑜や温宝家などの発言は、社会的な情勢に対する発言であり、急激に株価に影響を与えることは少ないでしょう。
為替リスクの回避は、毎日、為替をチェックして一喜一憂するのではなく、まず選ぶときに、米ドルに対して連動している国の為替なのか、そうでないのかを調べましょう。米ドル関連の資産を持っている方は、非連動の国を選ぶことです。米ドルが下がっても新興国の株は上がるというように、分散投資ができます。次に、売却したときは日本円で受け取るのかドルでも受け取れとるのかを確認しておきましょう。換算する必要がなければ為替リスクにさほど動揺することはありません。さらにロシア株にとってチェックする大事なポイントは、原油など資源の価格です。特にロシアでは原油に連動していることもあり、原油が急落した場合は株価のチェックを怠らないことです。
新興国から欧州へ
一方で、これまであまり経済成長率の高さが見込めず、株式市場においても注目されなった先進国への注目が高まっています。ドル機軸通貨からユーロに注目が集まっているように、株式も米国より欧州の株式市場が注目されています。米国では、デフレ化しないように経済支援を強化していますが、欧州はそれより財政を健全化することを重視しています。
欧州は全体的にはあまりよくありませんが、それでも悪いものはすでに出尽くしています。米国と違い財政を健全化させることに注目している点は、今後の経済成長が期待できます。
欧州株の強さ、ユーロの強さ
欧州主要企業600社で構成されるStoxx欧州600指数やユーロ・ストックス50指数は、上昇傾向にあります。ユーロストックスは浮動株に基づく時価総額加重平均指数で欧州経済通貨同盟 (EMU) 加盟国の優良50銘柄で構成されていますから、欧州経済の強さを意味します。
欧州の魅力は、なんといってもユーロの強さです。1999年、欧州11カ国にユーロが導入されてから、世界の外貨準備高に占める割合でが日本円を大幅に上回るようになりました。米ドルに次ぐ世界第2位の基軸通貨となっていることです。2011年現在で17ヵ国が導入しています。もし、今後イギリスやスウェーデンなどが加われば、ユーロが米ドルへ代わる通貨として期待も高まります。
ドイツの経済は、東西統合以来の成長
ドイツ経済の本格的な復活年になったといえます。欧州のGDPの3割を占めるドイツは、昨年のGDP成長率は3.6%増、1992年の東西ドイツ統合後の最高値を記録しています。OECDは、今年のGDP成長率を2.5%増、再来年は2.2%増と予測しています。
ドイツはもともと輸出主導型の経済ですが、昨年はユーロ圏外の輸出先との関係により成長しています。でも、それだけではありません。
経済成長の牽引役は、輸出から内需へと移行しているためです。昨年のGDP成長率の寄与度は、純輸出+1.1ポイント(輸出14.2%増、輸入13%増)に対して内需は2.5ポイントとなっています。失業者数も18年ぶりに300万人を下回るほど改善されたこと、住宅価格が安定したこと、賃金が2%上昇したことなどが消費を活性化させているのです。
ドイツ経済のリスク
昨年の第3四半期までの中国向け輸出は前年同期比で46%増加したことは、輸出を拡大し、内需にもつながりました。しかし、中国経済を始め輸出国が金融引き締めや緊縮財政で需要が減少することもあります。それにより賃金が再び低迷すること、また、国内の食料品価格の上昇が、消費動向が低迷することもあるでしょう。
GDP成長率は1%から3%あまりと新興国に比べると上昇率が低い欧州では株価上昇率も高くは望めません。しかし、新興国の場合は、株価上昇率も高いかわりに、下落率も高く、ハイリスクハイリターンというマイナス面もあります。安定性の高い国に投資するか、成長性の高い国に投資するかは、本人の性格や投資方法と資産内容によりますが、定年後ならば7割ほどは安定性の高い国への投資がいいでしょう。
外国株の買い方 外国株を取り扱う証券会社
外国株というと投資信託を思い浮かべる方が多いと思いますが、一株当たりの株価が安いため個別銘柄を購入する投資家も多いようです。中国株の個別銘柄は東洋証券、内藤証券、東海東京証券で、香港株は大和証券や松井証券などでも取り扱っています。ベトナム株を取り扱っている証券会社は岩井証券、アイザワ証券、日本アジア証券、キャピタル・パートナーズ証券、ニュース証券などです。ブラジル株はニュース証券が個別を取り扱っています。楽天証券、SBI証券、大和証券ではADR(米国預託証券=米国市場で外国企業が発行する証券)として購入できます。欧州株の個別銘柄を扱っている証券会社は、岡三證券、東海東京証券などがあります。それぞれの証券会社で得意な外国株があります