自分のお墓をどうしよう?
「永代供養墓」という考え方もある
 
景気低迷とデフレに伴い、お墓にお金をかける人が減り、また、「核家族化」の時
代で、都会はともかく、地方のお墓は守り手も少なくなっています。〝おひとり
さま〟の増大による「永代供養墓」(合葬墓、合同墓、共同墓)の流行もあります。
いま、お墓に関してどんな問題が起きているのでしょうか。考えてみれば、お墓
の建立費、管理費などシステムについては、よくわからないもの事実……。
そこで、現代の「お墓事情」をNPO法人永代供養協会・小原崇裕さんにお聞きし
ました。
「永代供養墓」への改葬現象は社会変化の鏡柏木 親の世代に比べると、私たち
の世代はお墓参りの習慣が希薄なように思います。また長寿社会が進んで、老後の〝おひとりさま〟が増えています。「お墓を持たなくてもいい」という人が東京では3人に1人だそうですが……。
小原 いままでのような先祖代々の墓といった「家墓」を建てる人は、明らかに減っています。いまの社会は少子高齢化、核家族化、非婚化が進み、離婚や都会への移住、転勤が当たり前になっていますよね。その結果、①故郷や実家の先祖代々のお墓を継
ぐ人がいなくなって困る。②檀家だった親が亡くなってお墓を継いだが、お布施や管理費、寄付金などの負担が重いうえ、お寺との付き合いが面倒で、お墓を処分してお寺から離れたい。③残された家族に「墓守」や「お寺との付き合い」などの面倒を残したくない。④「自分のお墓のことは自分で決めたい」という思いから、家単位ではなく、個人単位のお墓を求めたい。などと考える人が増え、その結果、お墓を引越す「改葬」が増え、遠方の故郷から、いま住んでいる都市部の霊園や「永代供養墓」に埋骨する人が多くなっています。
柏木 たしかに「先祖代々の墓」では、お墓を守ってくれる人が必要ですし、金銭的にも肉体的にも負担になる場合がありますね。
小原 檀家になれば、お寺との付き合いにも気を使うので、「もうこりごり、檀家にならなくていい永代供養墓へ」と考える人は多いですよ。地方から都会へというだけでなく、都内のお寺から同じ都内の永代供養墓に「改葬」する例もあります。いまやお墓は永代供養墓が主流になりつつあります。
柏木「永代供養墓」というのは、どういうものですか?
小原 他の人と一緒に1つのお墓に安置する形式で、「合同墓」とも呼ばれていますが、お墓参りできない人に代わって、あるいはお墓参りしてくれる人がいなくても、お寺が責任を持って永代にわたり、供養と管理をしてくれるお墓です。特定の宗派にもこだわりません。
柏木 私の場合、お墓は故郷にありますが、近くに誰も住んでいません。お墓を大事にして祖先を敬いたい気持ちはありますが、飛行機でお墓参りにいかなければならないのは厳しいです。
小原 いずれは都市部への改葬が必要になるでしょうね。ところが中には、改葬に当たって、現在お墓があるお寺から高額な「離檀料」を要求されて困惑する例が少なくありません。改葬するには、市や区役所で「改葬許可申請」の手続きをしなければならないのですが、そこに、いまお墓があるお寺の署名、捺印が必要なので、お寺が強気になりがちなのです。またその一方で、改葬というのは「寺離れ」「寺替え」ですから、新し
いお寺に高額な寄付金を強要されたり、新しい住職の人間性に我慢できないケースもあります。
柏木 親にまかせっきりで、お寺の住職と会う機会がなかった人も少なくないでしょうし。その一方で、お葬式費用の節約ブームもあって、お墓への節約志向も高まっていますね。
小原 ちょうど自分たちのお墓のことを準備しなければならない60代から70代の世代は、お金があってもお墓に使おうとしない世代です。医療費が高くなっていますから、
いざ病気をしたときのための貯えが必要と考え、先祖を敬う気持ちがあっても、お墓に多額のお金を使えないのです。
一般墓と永代供養墓のメリット・デメリット
柏木 実際にはお墓にかかる費用はどれくらいなのですか?
小原 一般墓の場合は、永代使用料(墓地使用料:墓地を使用する権利料で所有権ではない)に墓石代、工事費がかかります。購入後は年間管理費(墓地を使用する限り永久に必要)もかかります。「入檀料」「志納料」が必要になる場合もあります。費用は地方と都市部、または同じ東京都内でも、場所や大きさなどで差がありますが、地方でいうと、永代使用料、墓石代、工事代など一式で100万円未満。東京都内なら、よ
ほど小さくない限り、100万円を超えます。それ以外に年間管理費がかかります。
永代供養墓は、個人墓の場合を除いて墓石代がかからず、墓地使用料が割安になるなどで、一般のお墓と比べて割安なのが特徴。一度、一式料金を払えば、その後は、管理費やお布施(お塔婆代など)、寄付金などの費用は一切かかりません。永代供養墓料は「骨壺骨安置タイプ」の場合、全国平均で約50万円、東京では平均約30万円と、地方のほうが高い傾向にあります。「骨壷安置タイプ」と「合祀タイプ」がありますが、合祀タイプはさらに安くなります。
しかも一般墓は、一度建てるとなくすのは容易ではありません。子供や継承者がいない場合、本人が没後、すぐに無縁墓になりますが、永代供養墓なら、お寺が責任を持って永代にわたって供養と管理をしてもらえます。
〝よい〟永代供養墓をどうやって選ぶ?
柏木 永代供養墓を選ぶには、どこに注意すればよいのですか。
小原 一口に「永代供養墓」といっても、造りや料金体系は、お寺によってさまざまです。たとえば納骨の仕方なら「合祀型」「お骨安置型」、供養のやり方では「彼岸・お盆に合同供養をするところ」「毎年、祥月命日も供養するところ」といったように、永代供養墓の数の分だけ、形式が異なります。
柏木 なかなか複雑ですね。
小原 そうです。ですからお墓の造り、外観の良し悪し、立地、環境、料金の妥当性などを踏まえて検討するのはもちろん、実際に足を運んで、ご住職と面会し、供養を託することができるかどうかを確認することですね。本堂や墓前で手を合わせてみて、安心できるお寺を選ぶことです。
「改葬」費用と手続きは「ここ」に注意!
柏木 それでは、いずれお墓を移転するとして、どれくらいの費用がかかるのですか?
小原 まず、「墓石撤去料」「離檀料」がかかります。改装の場合、これまで使用したお墓を更地にしてお寺などの墓地所有者に返さなければなりません。石屋さんに墓石撤去代を支払ってやってもらいます。費用は、お墓の大きさによって違うので一概にいえませんが、10~ 30万円といったところ。また、お寺にこれまでお世話になったお礼の気持ちを込めて、お墓を撤去するときに読経料を納めます。
柏木 手続きは簡単なのでしょう__?
小原 まず、いま存在しているお墓がある市町村、区役所から「改装許可申請書」を取り寄せます。そしていまのお寺の署名、印鑑をもらいます。ところがそのときに「離檀料をもっと払わなければ署名しない」などという住職がいます。よく「お寺から離檀料を100万円払えといわれて困っている」と相談を受けますが、納められる額の範囲内で感謝の気持ちを表現すればよいのです。
柏木 でも、できればトラブルを起こしたくないですよね。
小原 住職とのトラブルを防ぐには、移転する前に住職に「こんな理由で改葬を考えているのですが」と相談を持ちかけることです。繰り返しますが、離檀料は言われるがままに多くを払う必要はありません。
柏木 東京では新聞などに霊園墓地などの広告が大々的に出ていますが、新しい移転先はどんなところがよいのでしょうか?
小原 自分がなぜ改葬したいのか。費用面なのか、地理的条件なのか、それともご住職の人柄か、自分の改葬の目的に合ったところを選ぶことです。ただ、とくに一般墓の場合、民間経営の霊園墓地は注意が必要です。好景気のときはよいですが、景気悪化に伴って、もし倒産という事態になったら、お墓参りができなくなる可能性もあります。その霊園の経営がしっかりしているかどうか、よく確認すること。都道府県など自治
体が運営する公営墓地なら安心ですが、倍率が高いのが難点です。
柏木 東日本大震災でお墓が倒れたのを見たせいか、最近は納骨堂を選ぶ人も増えているようですね。
小原 あれほどの大震災を目にすると、そういう気持ちになるのも無理ありませんね。納骨堂は建物の中、室内のロッカーのような区画にお骨を安置する形式ですから、墓石の倒壊を懸念する必要がありません。また、同じお寺の敷地内にある永代供養墓に合祀してくれますから、祭祀承継者が絶えても承継の心配がいりません。永代供養墓を選ぶか、納骨堂を選ぶか、ご自分の生き方にどちらがぴったりか、よく考えて選ぶといいのではないでしょうか。