ファンケル健康院出版 百楽 柏木理佳の熟年世代のマネー講座連載第19回
便利なセキュリティ対策はこんなにある・・・・
最近、高齢者を狙った空き巣、盗難事件が増えています。殺人事件に発展するケ
ースもあります。狙われるのは貯蓄平均2000万円、持ち家の割合が高い高齢
者。「命あっての物種」といいますが、たとえ身体的被害がなくても、大切な資産
を失ったら泣くに泣けません。奇しくも9月1日は「防災の日」。「防災」という
と地震や津波ばかりが頭に浮かびますが、防災と防犯はワンセット。防犯への備
えが防災意識につながることも多いのです。そこで今回は、「防犯対策」につい
て私、柏木理佳がまとめました。
ホームセキュリティで総合的な防犯対策を高齢者をターゲットにした窃盗、
殺人事件のニュースをよく耳にします。警察庁の「平成22年犯罪情勢」
によると高齢者(65歳以上)の被害をみると窃盗が76%で最も多く、続
いて詐欺4・8%、傷害1・2%、暴行1・3%、強盗0・3%。窃盗被害の
危険は案外、身近にあるのです。65歳以上の高齢者が狙われるの
は、「高齢者は貯蓄率が高い」こと、そして「体力的に衰えているだろう」
と、犯罪者側に思われているためでしょう。
金融公報中央委員会によると確かに高齢者の場合、70歳以上の平均貯
蓄額は2119万円と高く、持ち家率も8割以上を占めています。
そして「体が不自由になっても自宅に住み続けたい」と願う人が7割を占め
ていて、長期的に定住している高齢者は、生活習慣や外出のパターンを
監視されやすくなっているといえます。防犯対策の重要性は、ほとんどの
人が認識しています。とくに高齢者に限らず、一人暮らしの女性、出張
の多い人、治安の悪い地域に暮らす人は、何らかの防犯対策が必要です。
ですが、防犯対策に関心があっても、具体的なセキュリティ対策をしている人は、まだまだ少ないのが現状です。
そこで高齢者夫婦世帯に役立ちそうなのが「ホームセキュリティ」。
全国的にサービスを展開しているのはセコムや総合警備保障(ALSO
K)、セントラル警備保障の3社ですが、ほかに全日警、関電SOS(関
西エリア)、東急セキュリティ(神奈川県の一部)などが代表的です。
ホームセキュリティの代表的なシステムでは、異常が発生した場合、設置された
防犯システムがそれを検知し、電話回線やインターネット回線を通じてセンター
に通報、オペレーターが状況を判断し、警備員が駆けつけてくれます。異常を感
知するセンサーは、主に磁器などを利用した窓の開閉センサー、身体が発する熱
や赤外線で侵入者を感知する空間センサー、裏口や庭の死角、暗いガレージなど
で不審者の動きを監視する人感センサーなど。これらを駆使して24時間、365
日監視してくれるのです。
また最近、とくに注目されているのが火災やガス漏れ対策。センサーが煙やガス
漏れを検知すると、深夜や不在中でも、自動的に警察や消防へ通報してくれます。
あるいは、本人が急病で倒れそうになったときや、外出から戻ってきて不審に感
じたときなどに、ボタンを押してかけつけてもらうサービスもあります(図1参
照)。ただしプランによって受けられるサービスが異なるので、加入時によく検
討してください。
厚生省の「人口動態統計」によると、高齢者が家庭内で転落したりして、事故死
する人は年間1万人を超えています。高齢者に限れば、交通事故死より家庭内事
故死の方が多くなっているのです。ところが東京消防庁のデータによると、平成
15年の救急出場件数は66万3765件。27年間連続で増加し、過去3年間の平均
増加件数は約3万件に達しています。実に48秒に1回ずつ救急車が出動している
計算になりますが、もはや救急体制は限界ぎりぎりで、今後、緊急時に必ず救急
車が利用できるとは限りません。ホームセキュリティは、それに代わるものとし
て注目されているのです。
お金をかけない防災対策もホームセキュリティは、以前は費用が比較的高価で、
どちらかというと〝豪邸〟向きでしたが、いまはリーズナブルになり、標準的な
もので料金は毎月数千円から1万円程度。その結果、富裕層だけでなく、一般家
庭にも広く普及しています。部屋数や利用サービスにより異なりますが、ALS
OKなどには「毎月の新聞代程度」(2012年2月までに加入の場合、月々2
945円)の低価格サービスもあります。
また一定時間トイレのドアが開けられないことを察知して異常発生を知らせたり、
長時間、水道を使用しない場合に水量センサー機能が自動的に異常を連絡するシ
ステムもあります。ただしこんなケースで長期間家を空ける場合は、「外出中」
を知らせるスイッチを押し忘れないように注意。また、あれもこれもとセンサ
ーを取り付けると、ダニアースの煙やお風呂の湯煙で火災探知機やセンサーが
反応したりするので、自分のライフスタイルに合わせて契約会社と相談し、必
要最低限のものからスタートするとよいでしょう。そして万一、被害にあった
場合は、各警備会社と保険会社の間で締結された保険契約によって、一定額ま
での保険金が支払われます。被害者が支払う自己負担金が少額で済む場合や、
建物修復の見舞金が支払われることもあります。
身近にある器具を活用、遠く離れた子供に異常を通知「そこまで大げさにしなく
ても」という方には、もっと低価格で簡単なものもあります。たとえば東京ガス
の「マイツーホー」は毎月493円で、ガスの消し忘れを報告してくれますし、
また、外出中にガスの消し忘れを思い出したら「ステーション24」というコール
センターに電話すれば、電話回線を通じてガスを遮断してくれます。
ガスの消し忘れかどうかわからない場合でも、外出先からメールで確認できます。
空き巣対策では、「防犯あわせペアガラス」も有効です。統計では、空き巣の6
割以上は窓ガラスからの侵入ですが、強靭な中間膜が入った「防犯あわせペアガ
ラス」を設置すれば、かなり侵入を防ぐことができます。空き巣が穴を開けてガ
ラスを打ち破ろうとしても、5分以上時間がかかりそうなら、侵入を諦める率が
69%というデータもあります。
ホームセキュリティに入っていない場合でも、自分が急病や転倒で倒れたり、事
件に巻き込まれた場合、離れた子ところで暮らす子供や親戚などに知らせるシス
テムがあります。その一例が東京ガスの「みまも~る」というシステム。もとも
とは遠方に住む高齢家族の安否を確認するためにできたものですが、毎月987
円を払えば、1時間ごとにガスの使用量がメールで報告されるので、子供たちは
離れていても親の暮らしぶりを知ることができます。
また、象印マホービンでは電気ポットの使用状況を察知して、離れて暮らす高齢
者の生活状況を見守る「みまもりほっとライン」サービスが有名ですが、これに
、外出の様子や帰宅状況までも、離れた子供たちにEメールで知らせてくれる
「おでかけお知らせ」機能が追加されました。料金は1台につき、初回契約料
5250円、月額利用料が3150円です。
また先ほど、本人が急病で倒れそうになったときなどにボタンを押してかけつけ
てもらうサービスをご紹介しましたが、各自治体や社会福祉協議会なども高齢者
や65歳以上の一人暮らしの人を対象に、こうした居住支援を始めています。
たとえば(社)東京都宅地建物取引業協会千代田中央支部では、家庭内で急病に
なったり、緊急事態が発生した場合、ペンダント型の無線発報機のボタンを押す
と救助に駆けつけてくれます。そのほか、火災自動通報機、電磁調理器家機器、
転倒防止器具の取り付けなどを給付する場合、費用の一部を負担してくれます。
同じようなサービスは、全国各自治体で行なっているので、地元の役所に問い
合わせてみてください。
積極的に地域の人と助け合う高齢化社会の到来に伴い、今年6月から新築物件だ
けでなく既存住宅にもから寝室に利用する各部屋に火災警報器を取り付けること
が「消防法改正」で義務化されました。また東日本大地震の影響で、防災活動や
災害時の対応に貢献できる人を認定する新資格(2011年4月)の「社会貢献
活動支援士」や「防災士」を目指す人も急増しています。空き巣発生率も、隣人
の目があればぐんと低くなります。おたがいが声をかけ合うだけでも、いざとい
うときに役立ちますが、こうした資格を取得して、玄関に資格取得のマークを貼
るだけでも、盗難防止につながるはずです。
また柔道や合気道などの資格者であれば、そのマークを貼り付けておくだけで、
犯罪の発生件数は低くなるといいます。老化が進むと、火の消し忘れなどの不注
意意が増えるだけでなく、強盗に立ち向かう力も衰えます。
高齢者を狙う詐欺事件も頻発していて、詐欺被害者は8割が60歳以上。次々と手
口を変える新型詐欺や、頻繁に訪れる不審者などを事前にガードできたら、危険
はずっと少なくなるはずです。これを機会にぜひ、身近な防犯対策を見直してみ
てはいかがですか。