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http://wol.nikkeibp.co.jp/article/column/20130724/158281/?n_cid=nbpwol_else
転職希望者必見! 採用が増える業種は?
2013年8月8日
これから採用が増えそうな注目の業種はどこ? .
 こんにちは、柏木理佳です。この連載は、転職を具体的に考えている方や、転職や仕事についていろいろ迷っている方、部署を変わりたい方、仕事がうまくいかずなんとなくいきづまっている方…などに、少しでもうまくいくように元気に前向きになってもらうためのものです。
 そうした悩みを少しでも解決するためには、まずは現状を知ることです。関心のある仕事・産業・雇用の現状や自分をとりまく環境を知ることで次の決断の手助けができ、将来の方向性を予測できる目を持つことができるようになります。
 さて、アベノミクス効果のせいか、私の家の周辺では、今まで誰もお客がいなかった喫茶店が常に満員状態になり、放置されていた更地の土地は、急にマンションや住宅の建設ラッシュになっています。マンションの購入者は昨年より増え、来年の4月の消費税アップ直前が購入ピークになるといわれ、不動産会社から私のマンションも売ってくれないかという問い合わせが増えています。データでも確かに、今年3月期決算は昨年に比較して2割近くの上場会社が、業績がアップしたと回答しています。円安効果によるものです。
 それでも本当のところ、日本経済はずっと上向いていくのかと、不安を持っている方も多いでしょう。日経平均株価は、投機的な投資をする外国人投資家の売買が増えているため高くなったり低くなったりしています。日本株に対し多くの日本人が投資し始めなければ株価は安定しないでしょう。
 実際のところ日本経済は回復するのでしょうか? 一時的に株価上昇による時価総額が増えてもずっと継続するのでしょうか? 企業の業績の回復基調が本当に続くのは、少なくとも数年後にしか分かりません。
 しかし、全体的に日本経済は好調になり、自分の企業の業績も上向くであろうという期待感から、企業は行動を起こします。つまり、採用を増やすなど、売り上げが増えたときに対応できるように今のうちから準備するのです。
今、採用を増やしているのはどんな業種?
 ですから業績が伸びるであろうと期待されている注目の産業については、今のうちなら採用者を増やす可能性があります。転職希望先が注目の産業なら転職のチャンスといえるかもしれません。
 では、いったいどんな産業が注目なのでしょうか?
 注目の産業は大きく分けると次のとおりです。キーワードは、円安効果(輸出業や観光業)、消費税アップ(高額商品を扱う産業)、アベノミクス成長戦略(ロボット産業)、TPP(農業)、保育所不足(保育士、ベビーシッター)、高齢化(サービス業、看護師、介護)、障害者の人権保護などです。
 では、具体的に見てみましょう。
1)円安効果による注目産業=輸出業や観光業
 為替が日本に有利な円安のうちは、輸出産業が注目です。海外、特にアジアからの旅行客も増加し、通訳や旅行業、ホテルなど、外国人旅行者相手の観光業も業績が伸びています。また、自動車や家電などの製造業だけでなく、途上国を中心にアジアやアフリカなど新興国での道路やダムなどのインフラ整備を行う建設会社などの重厚長大産業も注目です。円安はいつまで続くか分かりません。求人が出ていないかなどを業績が良いうちに自分から探しにいくことが大切です。
(2)消費税アップによる注目産業=高額商品を扱う産業
 来年の4月に消費税がアップされる前に高額な商品を購入しておこうと考える人も増えています。高額なものを販売する会社、例えば、高級楽器、絵画や自動車、リフォームや不動産業界などは少なくとも3月までは好調でしょう。期限付きの短期的な好調なので正社員採用ではないかもしれませんが、全く採用をしてなかった企業が何らかの形で採用を増やすかもしれません。販売職はどうしても正社員採用が少ないので、販売に興味がある方は正社員にこだわらない方には、いいでしょう。
(3)アベノミクスの成長戦略による注目産業=ロボットなどを手がける企業
 安倍政権が、政策として優先的に成長戦略として位置付けている分野に、ロボットなどの最先端技術開発があります。ロボットといってもいろいろあります。外科手術の手伝いをする医療ロボット、家事ロボット、相手に話しかける介護ロボット、家庭教師ロボットなど、様々な分野で期待されています。それにともない各企業は、ロボットだけでなく、ラベル印刷機や自動車内装向けの印刷機など先端技術を駆使した新製品向けなどで人員を増加させる予定です。「自分は技術者でないから、ロボット開発には直接的な関係はない」などと思わなくてOK。ロボットなどの先進技術を進める部署のある会社なら業績向上が期待でき、ロボット自体の開発部門だけでなく、材料調達の部門や人材管理のための部門、総務、会計などでも採用を増やす可能性があるので、最先端技術部門を持つ企業の採用情報にアンテナを張りましょう。
(4)TPPによる注目産業=農業関連
 日本がTPPに参加すれば、安い農作物を大量に輸入することとなり日本の農業に不利になるため、政府は農業保護に力を入れます。海外からの野菜と差別化するために、無農薬、有機野菜などの輸出や、無農薬野菜による加工品の国内販売などが注目されるでしょう。東日本大震災後、放射能の影響や小さい子供のための食にこだわる人が増えると考え、私の知人は、農家の実家から無農薬の野菜を仕入れ、パンやケーキ、プリンなどの材料にしてベーカリーを開店し、繁盛させています。農業そのものでなく、農作物の加工や流通、無農薬農作物の普及イベントなど、農業、食品関連の産業が注目され、業績の良い業界として人材の採用が増えるかもしれません。
(5)保育所不足による注目職種=保育士資格者、ベビーシッター
 保育士の資格保有者が不足していますが、それだけでなく、私の周りでもそうですが、認可保育所の不足によりベビーシッターの依頼が殺到しています。私の居住区のベビーシッター協会に登録しているベビーシッター派遣会社すべてに電話をしても、レギュラー可能なシッターはおらず、毎回違うシッターしか手配できません。また、現在のベビーシッターの多くは日中にパートで働いている主婦であり、本格的に保育士を目指しつつシッターのアルバイトしている人は少ないようです。興味がある分野であれば、土日のアルバイトなどから始めて経験を積みながら、通信で保育士などの資格をとる方法もあります。
(6)高齢化による注目産業=看護師、介護ヘルパーなどのサービス業
 高齢化が進み慢性的に不足しているのが看護師や介護ヘルパーなど、医療現場や高齢者施設で働くスタッフです。高齢者が多い医療現場では、高齢者や患者を直接手助けする看護師やヘルパーだけでなく、医療事務のスタッフの需要もあります。私のゼミ生も医療事務の資格をとった学生は、すぐに総合病院に採用されました。
(7)障害者などへの対応可能な人材、企業
 米国では、人種差別や男女差別に関する問題意識の高まりに続き、障害者の人権保護に関する意識が高まりました。日本でも障害者向けの公共トイレが増えるなど、少しずつ改善されてはいますが、欧米に比べるとまだまだ障害者が生活しやすい国とはいえません。しかし、東日本大震災以後は、社会貢献に関心を持つ個人や企業が増えてきました。私の家の近くには障害者用のNPO団体がたくさんありますし、私が教えている学生の中にも障害者を対象とした施設でアルバイトをしている人がいます。日本では高齢者向けのバリヤフリー住宅がすでに普及していますが、今後は、欧米のように、障害者向けの関連商品も充実するかもしれません。例えば、欧米では車椅子だけで100種類以上あり、細かいオーダーメイドも可能です。また、介護ヘルパーは増えていますが、障害者向けの福祉サービスも充実すべきです。長期的に見て障害者向けの関連商品の開発・販売企業や福祉関連サービスなどは注目ではないでしょうか。
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 以上、参考までに、今後注目される可能性のある分野を紹介しました。上記に直接興味のある分野がなかった方でも、縦ではなく横でみると、関連性のあるものが見えてくるかもしれません。たとえば英語に興味があり外資系企業に興味がある方は、外資系の中でもロボット開発を手掛ける企業などを選ぶと、採用に結びつきやすいかもしれません。