日経BIZアカデミー
日経BizCOLLEGEhttp://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20140305/386473/?rt=nocnt
女性の能力を活かす24の知恵~これだけ知っておけば大丈夫!
女性と働くという本当の意味
2014.03.12
グローバル化が進む中、アベノミクスにより女性の雇用増加が期待されています。これまで以上に女性の扱いを知らないと大変な目にあうかもしれません。知人男性の中にも、セクハラで訴えられリストラされた人、不倫の噂がもとで仕事がうまくいかなくなり、揚げ句の果てに地方に転勤させれられた人…など、女性が原因で大損をした人がたくさんいます。この連載では、そんな女性問題が起きないよう、そして、女性たちの能力を活かし、仕事にうまく活用できる方法を生活経済ジャーナリストの柏木理佳(かしわぎ・りか)氏に伝授していただきます。
■受付の女の子→営業、自分のアシスタントと思っていたらライバルに
女性は複数の仕事が同時にできる能力がある
 大手企業の取締役である知人男性は、ここ数年、女性ばかり採用しています。なぜ女性ばかり採用するのかと聞いたところ、「同じ仕事を男女に頼んだら、女性のほうが、断然、早く終わる」「同期の男女にプレゼン企画書を依頼したら、期限の3日前に提出するのは女性、3日前から取りかかるのが男性」と言います。
 会社は3日間夜遅くまで働く男性の残業代を払うばかりか、ミスがあった場合の大きな変更も直前だとできない。だから男性に頼むのはリスクがあるのだそうです。男性より女性は、計画的、そして、ハートフォードシャー大学心理学部の研究で証明されているように「作業と計画立案を同時にこなす」「一度に複数のことを同時に行うことができる」能力に長けていて迅速に仕事がこなせるのです。
 入社10年目のA子さんは、受付をしながら、支店の課長の営業アシスタントをしていました。でも、まさか、彼女が課長を追い越すなんて。今度の人事異動で本社の課長になったのです。彼女は、受付の椅子に座ってはいますが、時には本社の部長の秘書として出張の手配をし、営業部の手伝いとしてセールスの電話をかけたり、クレーム処理のフォローまでマルチになんでもこなしていたのです。
 課長は、てっきり、彼女は受付以外には、自分だけのアシスタントをしていると思い、傲慢な態度で接していたので、彼女の昇進の事実には、しばらくショックを隠せない様子でした。
でも、これはA子さんに限ったことではありません。
 家庭でも、妻は、料理しながら片手で雑巾がけ、携帯電話をスピーカーオン、目はテレビを見ている。夫は、ソファに座って新聞を読みながら、集中できないとテレビを消そうとしている。そんな光景はよく目にするでしょう。この能力は、会社にとっては、大変な戦力となります。
 一度に複数のことができれば、効率も良く短時間で終わります。一方、一つのことにこだわりそれだけを長時間かけて完璧にしあげようとすると、時間がかかるばかりか、他の仕事は他の人が担当しなければならなくなります。
 特に中小企業にとっては一つのことだけに集中し、長時間かけて完璧にしようとする人ではなく、あれこれと何でも嫌がらずに挑戦する人を求めています。中小企業だけでなく、特に景気が低迷している今は、継続的に何か一つの仕事だけをすればいいという大企業も少なくなりました。
 一般的には、女性は男性より計画的で、仕事が早いのです。女性の能力を理解してうまく活用しましょう。
結論:仕事が迅速で計画的な女性の能力を活かそう
■働く女性は男性と同じと考える→失敗、女性部下を指導できず管理職をはずされる
女性部下を指導できないと管理職になれない?!
 気を使わなければならない女性は、同期か上司と思いがちですが、一番大事なのは、女性部下の能力を最大限に活かすことです。女性部下とトラブルを起こすと管理職をはずされるといっても過言ではありません。
 常に、営業成績ナンバーワンで事務作業もテキパキとこなす男性がいました。次の人事では、彼は部長への昇進が噂されていました。男性上司にも期待され、管理職として最有力候補でした。
 ところが、女性部下の評判は非常に悪かったのです。女性とのコミュニケーション能力が低かったのです。彼は、女性を蔑視しているようにも思われていました。女性部下は、彼のために働こうという気持ちになりませんでした。
「鈴木! この資料、100部印刷して! 夕方までに僕の机の上に置いておいて!」などと、敬語を使わず、名前も呼び捨てです。仕事依頼の理由も言わずに仕事を頼みます。女性部下たちはモチベーションが下がり、ほかの仕事を先に進めていました。
 一方、営業成績は2位ながら、最有力候補のライバルの男性は、「鈴木さん、明日、重要なお客様がいらして、大事な会議をするから、帰るまでにこの資料を100部セットアップお願いします。途中で分からないことがあったら質問してください。まずは1部セットできたら見せて下さい。ミスしたら大変なことになるから、重要なことは鈴木さんにしか任せられない」と依頼されています。断然、こちらの資料を先に、そして丁寧に仕上げてしまいます。
 大事な会議では、ナンバー2の企画書のほうが見やすく、プレゼンテーションがうまくいったのは言うまでもありません。
 女性部下はナンバー2の評価が上がるように、資料提出、接客を計らったのです。結局の会議の評価は人事に影響を及ぼすことになり、ナンバー2が部長になりました。
女性は男性と根本的に違います。体育会系で呼び捨てで通用すると思っているのは男性だけです。女性は細部まで説明を求めます。また、何のために、この仕事をしなければならないのか、なぜ明日までなのか? 仕事への理由を求めます。
 なぜでしょうか? 女性は、一人前の人間として扱われたいからです。
 男女共同参画の事業所アンケートでは、(1)お茶くみ・掃除・コピー等の雑用を主に女性にさせているか、(2)休憩中、女性社員にタバコ購入などの私用・雑用を言いつける人がいるか、(3)女性を一人前として扱わない雰囲気があるか、が企業に質問されます。外資系企業に勤務していていた私には、このような質問をすること自体に驚きますが、(1)から(3)の質問に、数%から数十%も該当する日本企業が多く存在します。男女平等どころか女性を一人前に扱っていないということの表れではないでしょうか。
 
私の周りにも、女性のことを指さして「あの女の子に頼んでおいて」と言う30代若手の男性社員がいます。
 先ほどのナンバーワン男性は、体育会系で男性部下には好かれていました。呼び方、説明不足など、女性は根本的に男性とは違うことを知らなかっただけなのです。女性は、一人前に扱われていなかったと感じたのです。
 管理職になりたいなら、まずは、女性をうまく活用できる男性であることが必須です。会社にとって経営陣のセクハラや不倫などの女性問題が大きくなると、企業価値を損なうことさえあるからです。特にグローバル企業は女性部下の活用方法を知っている男性を管理職にする傾向にあります。
結論:女性が根本的に男性と違うことを知ること(女性を一人前に扱うこと)
■女性はやさしいと思い軽くあしらう→耐えて耐えて、爆発したらすぐ行動を起こす
女性は平等に誉める。でも誉めるのは仕事のことだけ
 女性の活用方法を知るためには、まず、女性の思考方法を勉強することです。
 例えば、「昨日まで、従順に仕事を正確にこなしていた女性が、突然怒り出し、放り投げて帰宅してしまった」「意図的になのか、机の鍵、ファイルの鍵も持って帰ったから、何もできない。明日の大事な出張の書類の準備ができなくなった」などと途方にくれた経験のある男性もいるのではないでしょうか。
 でも、女性からみれば「雑に扱われている」「お礼もなく次の仕事をふってきた」「なんで私にばっかり頼むの?」など、少しずつ不満が溜まっただけのこと。
 研究では、左右の脳をつなぎ、感情成分の情報をやり取りする連絡回線(前交連)が、女性は男性よりも太く、男性にはたいしたことのない感情でも女性には大きな感情の波となって押し寄せてくるそうです。疲れがたまっているときや、嫌いな人からのちょっとした一言がかんに障りやすかったり、男女の関係があればエモーショナルになりやすいのもそのためです。
 ある女性は、新入社員の若い女性ばかりを男性上司がチヤホヤしたことについて不満を持っていました。仕事のできない若い女性のフォローは自分にまわってくるので不満も倍増です。ついに、その女性は、男性上司の究極の弱みである部長に相談しました。「男性上司が若い女性を無理やり食事に誘ったりパワハラしている。私にも入社時はそうだった。私には『もう妊娠できない年齢になった』とセクハラを言う。仕事のやる気がなくなる」など、これまでの不満と怒りは止まりません。実は、部長は、彼女と同じ大学の出身。先輩の紹介で部長と食事会の席を設けてもらったのです。
結局、男性上司は、部長ばかりか人事部から呼び出され、いくら言い訳、謝罪をしても無駄でした。いつもチヤホヤしていた若い女性も実はうれしくなかったのでしょう。かばってはくれません。結局、降格されてしまいました。少なくとも、男性の行動・発言は、女性の年齢に関して触れているのでセクハラと言われても仕方ありません。
 他人ごとではありません。私が教えた大学でも、会議中に、年配の定年前の教授が「まだ生理あったの?」「まだあなたは辞めないの? 結婚・出産は諦めたの?」という言葉を女性教員や私たちに頻繁に口にしていました。日本社会では、こんな会話は、日常茶飯事なのかもしれません。
「1人の女性を誉めたら、別の女性も平等に誉めること」、でも誉めるのは仕事の内容に関してのみです。年齢やルックス、それに洋服や持ち物を誉めることもタブーです。誉められた若い女性は他の女性から風当たりも悪くなることもあり迷惑なのです。
 出産・妊娠・結婚などのプライベートに関することに対しても発言しないことです。そんな女性の基本的な感情を学ぶことが大事です。とにかく、女性は耐えて耐えて、爆発したらすぐ行動を起こします。途中で機嫌が悪くなっていないか気づくことです。
 一方で、女性の姉、妹がいるまじめな若い男性。仕事を精いっぱいしても効率が上がらない。でも女性の能力を活かして管理職になった例もあります。クレーム担当の男性は、自分が一生懸命、謝罪しても顧客が納得してくれない。1人に対応する時間が半日もかかっていて残業ばかりでした。ある日、クレーム担当の窓口は、自分よりも女性のほうが接客能力があり、うまくいくことに気づきました。そこで自分より年上で育児経験のある女性スタッフを増やし、電話対応や窓口対応を全面的に担当してもらい、自分は裏方、書類の整理だけに徹しました。すると支店全体、彼の評価も上がり、いつの間にか管理職になったのです。仕事の向き不向きを考え、女性の能力をうまく活かした例です。
結論:女性部下をうまく活用できたら管理職に