女性自身 1月20日号
2015年の日本は耐え抜く1年
「14年末の選挙で、安部政権の続投が決定。これまでの政策が大きく変わることはないでしょう。そこに、円安の影響で物価の上昇が続き、庶民にとっては苦しい1年になると思います」
 誰もが気になる15年の日本経済について話をしてくれるのは、生活経済ジャーナリストとして活躍する柏木理佳さん。主婦にとって最大の関心のひとつだった消費増税は、17年4月へ延期されたものの「1年2カ月では、景気は回復しない」と柏木さんは話す。
「円安による原材料の高騰を受け、2~3月には冷凍食品やお菓子、アイスクリームなど食料品を中心に、続々と値上げが予定されています。これは、一般家庭にとっては大きな打撃。いつも購入していてストックが必要な食料品は、できるだけ1月中に買いだめしておきましょう」
 たとえば、江崎グリコは15年3月1日出荷分から、「ジャイアントコーン」や「アイスの実」など、主力商品を含む35品目を10~40円値上げすると発表している。日清食品では一足早く、1月1日出荷分から、カップ麺、即席麺を値上げ済みだ。
 もちろん輸入品のコーヒーや紅茶、魚や肉の加工品も値上がりは避けられない。そしてその余波は、外食産業にも――。
「吉野家は14年12月から、300円の牛丼を380円に値上げしています。これに続き、低価格を売りにしてきた外食チェーンが値上げに踏み切る可能性は高いですね」
 年2㌫の物価上昇を目標に掲げる安部政権にとって、この円安の影響は想定内。輸出企業が潤うことで、おカネが市中に循環し、給料もアップする――というのが、その先のシナリオだが、15年こそは期待できる?
「正直に言って、厳しいでしょう。そもそも、企業が潤うといっても、それはごく一部の話。しかも、円安がいつまで続くかは不透明です。そのため、企業もリスクを避け、大きな賃上げはほとんど行っていません。むしろ、状況が変わればいつでもリストラできるよう、雇用は非正規を中心に増やし、賃上げもボーナスなど、一時的な賞与への反映に留まっています。ですから、おカネも循環しようがありません。株価も、14年の金融緩和の影響が続き、上昇が予測されますが、これで資産が増えるのは株式投資をしている富裕層のみ。この1年で、広がっている貧富の差はますます広がるでしょう」
 そんな中、唯一、明るいニュースともいえるのは、急激に原油の価格が下がっていること。14年後半の間に4割も下落し、そのおかげでガソリンや灯油の値段も値下がり中なのだ。
「電気・ガス料金も引き下げられる見込みです。また、石油を原料にしたシャンプーや化粧品、化学繊維の衣料、プラスチック製品などの価格も下がるでしょう。航空運賃も例外ではありません。日本航空は、すでに2月発券分から、国際線の燃油サーチャージ値下げを発表しています」
この原油安は、夏までは続きそうとのことだが、それを差し引いてもお釣りがくるほど、物価は上昇しそうだ。せめて税負担を減らすなど、国からのサポートが増えれば助かるのだが……。
「所得控除の面では、うれしい制度新設が1つ。今年から、一般医薬品の購入も控除の対象になる見込みです。(厚労省の提案が通れば)年間2万5千円以上購入した世帯は、最大で50万円の控除を受けられるようになります。ただし、従来の医療費控除制度との選択制なので、どちらか出費の多いほうで控除を受けるようにしましょう」
 病院より、ドラッグストアで風邪薬や頭痛薬を買うことが多い家庭なら、ぜひこの新制度を利用したいところだ。
 そしてマイナス面で知っておきたいのは、相続税の改正により、基礎控除額が減額になる点。
「これにより、相続税の課税対象者が大幅に増えると予想されます。一度、財産を見直しをし、必要なら生前贈与など対策を取りましょう」
 15年末までは、祖父母から孫への教育資金を千500万円まで、非課税で贈与できる。また15年度からは、子育て費用などの贈与が新たに非課税となる見込みだ。
「祖父母や親が、20歳以下の子・孫に結婚、出産、子育ての費用を贈与する場合、非課税となります。非課税額は、子や孫1人当たり、1千万円までとなりそうです」
 こうした制度をうまく利用して、家計の負担を減らしていこう。柏木さんは「これからは、長期的な視点で堅実な家計管理をするのが大事」とアドバイスする。
「たとえば、住宅ローンの残高に応じて所得税が控除される『住宅ローン減税制度』が適用されるのは、17年度末まで。それまでにローンを終えてしまうほうが、結果として家計に負担がかかりません。ですから臨時収入があったとしても、消費には回さず、ローンの繰り上げ返済に充てるのが得策です。ローンが終わっている人なら、子供の教育資金に。学資保険は利率が10㌫を越えるものもあるので、小さな子供がいる人は、ぜひ加入を検討してみてください」
 値上げの嵐はすぐそこまで来ている。嵐を抜けるまで、耐え抜こう!
かしわぎ・りか★嘉悦大学付属産業文化観光総合研究所 客員主任研究員。中国・北京首都師範大学に留学。豪州の大学院にてMBA取得。NHK報道部などを経て、生活経済ジャーナリストとして独立。テレビ出演、書籍執筆などで活躍中。