激動の中国経済、金融、生活実態に迫るリアルレポート

<第3回>2016.12.14

https://job.career-tasu.jp/finance/columns/pro009/003/
変わりゆく中国で、いま、何が起きているのか

日本の人口が約1億2000万人に対し、13億7000万人を抱える中国。日本のおおよそ10倍の人口を抱える中国では、単純に13億7000万人が100円の物を買えば1370億円、1000円の物を買えば1兆3700億円になります。
一方、日本経済は消費を抑える、給料が上がらない、デフレ……と国民の生活にとってあまり思わしくないニュースばかりが耳に入ってきます。超高齢化に突入した日本が、急激な成長を維持する巨大消費国・中国により深く目を向けてマーケットの成り立ちを理解し、どのような協力関係を構築していくか考える時代がきています。
そこで連載第3回では、中国でいま起こっている変化や、新たな潮流をご紹介しましょう。

爆発的エネルギーを有する、中国メディア市場

資本主義国の日本に暮らす私たちには理解しづらい面も多いのですが、共産主義国から資本主義国に移行段階の中国では、未だ政府の管轄下に置かれており、あらゆる面で政府が関与しています。

中国では国営テレビである中国中央電視台というテレビ局(日本でいうNHK)などを中心に、数百ものテレビ番組があります。テレビの生産台数、販売台数はめまぐるしく増加していますが、2008年開催の北京五輪を機に、農村部にもテレビの普及が進みました。しかし、依然として中国国内ではフェイスブックは禁止されています。政治に関するメールの内容もチェックされているため、あらゆる情報を政府がコントロール(情報統制)していると見てよいでしょう。
しかし、最近ではその流れにある変化が起きています。外国人投資家が増えた民営企業においてはコーポレートガバナンスなどの情報公開の量が増えています。それに、生活に直結するテレビ、インターネットなどの情報メディアにも少しずつ変化が生まれてきています。こういった政府関与や規制がより一層緩和された時、巨大な視聴者・読者を持つ中国メディア市場は爆発的に拡大するポテンシャルを秘めています。

中国内需は、第二次産業から第三次産業へシフト

米国経済の不調により、これまでのように米国が中国製品を買ってくれなくなり、「世界の工場」と言われた中国の「製造業」も、ベトナムやカンボジアなど、より安い工賃で製造を請け負ってくれるアジア諸国に奪われています。また、「5カ年計画」によって政府が推進する重点項目や、経済運営のあり方が変わることもあるため、今まで中国経済の中心だった産業が政策変更したことにより、急激に事業内容を変更したり事業規模の縮小を余儀なくされることもあります。

政府は第二次産業(製造業)を中心とした輸出に支えられていましたが、現在は内需拡大、つまり消費を拡大することに力を入れています。
また、現在中国経済を牽引しているのは、第三次産業(IT・サービス業)です。サービス産業は、中国内需の潜在力を効果的に引き出し、雇用を拡大する効果もあるため、失業率も安定しています。
では、中国国内で躍進するサービス業の一例を挙げてみましょう。
ECやSNS、ゲームアプリなどのITサービス、ラーメンやファストフードなど飲食チェーン、ホテル、Eラーニングなどの教育、レジャー、スポーツといったサービス業が大きく成長し、これらのビジネスで「富」を手にした国民も非常に増えています。企業で言えば、、オンライン・マーケット「アリババ集団」も、今年10月に発表された「世界の時価総額ランキングASIA300」(※)で10位にランクイン。1999年の設立以来、瞬く間に急成長した「アリババ集団」のように、中国を拠点にネット販売により世界に躍進するサービス企業は、今後も非常に多くなると見込まれています。

スマホのユーザー数は、日本の約6倍にあたる約7億人

第二次産業から第三次産業にシフトしている中国でさらに特筆すべきは、インターネットを使ったビジネスが増加している点です。数だけを見ても、スマホのユーザー数は日本の人口の約6倍にあたる約7億人にのぼり、音楽配信サービス利用者が急増している点も大きな流れとなっています。その理由は、テレビでの情報規制や日本で1曲150〜200円するものが、中国では約15円でダウンロードできる手軽さもあります。また、国内だけでなく海外に在住する華僑向けYouTubeといったコンテンツも充実しています。違法ダウンロード、著作・肖像権等の面で問題は残っていますが、中国のネットビジネスは都市部だけではなく、内陸部のネット回線のインフラ整備の発展に伴い、さらなるビッグマーケットに成長することは明白です。

仮に中国の国民全員が音楽配信サービスを利用して、1曲15円で曲をダウンロードしたとしましょう。それだけで売り上げは単純計算で約210億円になります。この規模からも爆発的エネルギーを有した中国市場の成長を、世界が注視していることがわかりますね。
中国は、2009年から2012年まで日本の最大の貿易相手国でした。まさしく中国は日本にとって最強のビジネス・パートナーといえる存在なのですが、政府の方針転換により中心産業のトレンドが変わりやすいため、中長期的なビジネスを行うには慎重な判断が必要です。
次回は、気になる中国の人の生活実態や価値観等に触れ、中国の“いま”をより深く、よりリアルに理解していきましょう。
※日本経済新聞 2016年10月6日 日経アジア300指数特集より引用