日本の場合、出産を機に7割の人が退社するといいますが、中国では「女性が働き続けることは当然」と考えられています。中国は労働法で、企業が女性三期(妊娠期・出産期・授乳期)に解雇することが禁止されています。このため、出産を理由にやめる女性はほとんどいません。事業所内や工場、もしくは会社のすぐ近くに託児所があり、授乳婦はそこで1日20分×2回ほどの授乳時間が取れるシステムになっています。
中国では、女性が子供を生んでも働き続けられる環境が整っています。今回は、それが何かを見て行きましょう。
■ 理由その1 法律が違う
中国の法律では、妊娠期(妊娠が診断されてから産休までの期間)は、「妊娠7カ月以上の場合、使用者は労働者に毎日一定の休憩時間を付与しなければならない」と規定されています。つまり7カ月までは、妊婦でも通常通り働くことが当たり前となっているのです。
出産期(産休期間)は、基本的に産前15日、産後75日とされていて、多くの女性は、出産機が終わるとすぐに職場に戻ります。満24歳以上の初産の場合や難産と診断された場合は、15~30日ほど期間が延びますが、それでも期間を過ぎると職場復帰します。
授乳期(産休後から嬰児が満1歳を迎えるまでの期間)は、「使用者は1日1時間の授乳時間を付与しなければならない」となっています。このため、会社は託児所を用意しているわけです。
中国では、お腹が大きくても働いている女性をたくさん見かけますが、本人たちはそれが大変だと感じてなく、周りの人も日本のように過剰に気を使う様子はありません。
また、三期内においては、女子労働者の基本賃金を下げることは原則できません。日本でも妊娠を理由に解雇することは禁止されていますが、「妊娠前から解雇を考えていた」と簡単にそれ以外の理由を表向きにして肩たたきをする会社があるそうです。
中国ではそんなことはできません。「労働法」「女性従業員労働保護規定」「女性権益保護法」、それ以外にも地方ごとに規定されている地方条例があり、女性の働く権利が厳しく守られています。
■ 理由その2 両親や祖父母の協力が違う
最近は民営企業が増えたこともあり、子供が1歳ごろになるまで育児休暇(期間中は給料は6割ほどになる)を取る人が増えました。その傾向は、上海など都市部で見られます。ですが、それでも働き続ける女性が多いことに変わりはありません。
共働きの場合、子育てが大変になりますが、そこは日本とバックアップ体制が違います。特に中国では、働いている親の両親や祖父母が子供の面倒を積極的に見るからです。託児所に預けても迎えに行くのは祖父母だったりします。仕事が忙しい場合、週末しか迎えに行かない母親もいます。それほど、両親や祖父母は頼りになります。
■ 理由その3 職場の見る目が違う
日本の場合は、意外に女性の上司の目がシビアです。出産後、早めに退社する女性に対して「残業できないなら退社して、パートで入社し直しなさい」と言う人も少なくないようです。昇進のために出産を諦めたキャリア女性にとっては、子供を育てながら働く女性の気持ちを理解するのは難しいかもしれません。
また、仕事と子育てを両立している見本となる女性も職場に少ないのも問題です。相談する相手もなく、何となく退社せざるを得ない雰囲気になってしまいます。両立している前例が少ないことに加えて、残業が多いことも日本で働き続ける女性が増えない理由と言えます。
その点、中国は社内の雰囲気や視線が日本と明らかに違います。居づらくなることは、ほとんどありません。
■ 理由その4 夫の協力が違う
上海で開かれた育児シンポジウムでは、夫の育児支援に関する印象的な質問がありました。
「私は子育てと仕事で忙しすぎる。夫に仕事を辞めるようにいっているのに辞めてくれない。どうしたらいいか?」
中国では夫が家事を半分近く担当します。国が女性を尊敬するような政策を続けきたため、妻をいたわることの大事さを教育させられています。日本では、子供が出来たら妻が仕事を辞めるというのが一般的ですが、中国では違います。
中国では、女性でも「仕事=自分の価値」として大事にされます。妻の給料の7割を使ってでも、お手伝いさんを利用して共働きを選択することもあります。香港では、そういう中流家庭が多く存在します。
日本でも、両親や祖父母、夫の協力を促すことは可能でしょう。お手伝いさんに子育てを頼むこともできます。ですが、なかなか事はそううまくは進まないかもしれません。特に職場の周りの目を変えるのは至難の業です。それでも働き続ける強さと勇気を持つことが大切です。そういう強さと勇気を持って働く女性は、きっと次の世代の女性から感謝されることでしょう。