安倍首相が4月の「経済界との意見交換会」(動画)で「指導的地位に女性が占める割合を2020年までに30%程度」「役員に1人は女性を登用」と発言、自民党も「参議院選挙公約2013」で「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上」として掲げています。1986年に男女雇用機会均等法(以後、均等法)が施行されて以来、半世紀以上が経過しました。確かにその後、女性管理職は急激に増えましたが、管理職比率は、11.1%(男女共同参画白書(概要版)平成25年版より)と欧米諸国に比べるとまだ低い水準です。
 均等法の目的は、女性の昇進のためだけではありません。セクハラ・パワハラ・男女差別の防止です。ところが、均等法をよく理解せずに違反をしている人がまだいるようです。最近は、各都道府県労働局内に設置されている雇用均等室に相談したり、都道府県労働局長または調停委員が公平な第三者として紛争の当事者の間に立つ「都道府県労働局長による紛争解決援助」や「調停」の制度を利用する女性も増えています。そうなると企業は、雇用管理の是正を指導され、企業名が公表されることもあります。
 今回は、女性の雇用促進・管理職促進に伴う均等法の注意点などについて、柏木理佳(かしわぎ・りか)氏に解説してもらいます。
■採用面接で女性だけに出産・育児などの質問は要注意
均等法では男女平等の質問のみが許される
 中小企業の面接官を担当する部長(50歳)は、採用面接時に女性応募者に「もし子供が産まれたらどうしますか?」と質問しました。こういった質問が女性向けの面接対策本に掲載されている場合もあります。「できる限り働き続けたいです」と女性は模範的な返事をしました。
 もちろん、この質問は男性にはしませんでした。女性だけに質問することは、性別により異なる採用選考をすることを意味し、それだけで均等法に違反します。男女が平等でない質問をすること自体が問題になるのです。採用面接で女性の出産・育児などのキャリア形成を話題にするときは注意しなければなりません。
「性別で異なる採用選考は均等法違反です」
 また、応募条件では「男女募集」と告知していましたが、採用面接では「本当は、女性を探していたからちょうどよかった。女性が辞めたので女性を採用したかったんです」と応募女性に本音をもらしました。部長は女性に有利になるようにと本当のことを話してしまったのですが、実はこれもすでに違反です。
 男女を募集の対象としているにも関わらず、実際には採用の対象を女性(あるいは男性)だけと一方の性に限定することは均等法に違反します。
 採用の際に「男性募集」「女性募集」と公募すると均等法に違反するからと、「男女募集」と記載する企業が増えています。しかし、実際には3人の採用のうち3人とも女性(あるいは男性)を採用したというような最初からどちらかだけを採用したかったという企業は違反です。「男女募集」と明記したからには、男女を採用する必要があるのです。どちらかだけを採用した場合はその明確な理由が求められます。
結論:採用面接では男女双方にできる質問だけをする
面接後、一人の女性(男性)だけに追加で資料送付依頼は違反
均等法の趣旨に違反する資料を要求しない
 応募条件が書かれていたホームページには、履歴書と写真を郵送するように指示がありました。しかし、面接官は、面接後、車で通勤したいと希望する女性だけに、車で通勤する場合の通勤移動距離や移動場所の地図の郵送を依頼しました。通勤渋滞により朝5時に家を出なければならないのではないか? 渋滞はストレスになり仕事に支障がでないかなどということを調べたかったためだけです。
 しかし、応募者全員に依頼していたのは履歴書だけを郵送することでした。たとえ女性応募者の通勤について不安があったとしても、その後、一人の女性(男性)だけに追加で資料送付を依頼することは違反になるのです。同様に、女性(男性)にだけ全身写真を追加で添付依頼したり、未婚・既婚や子供の年齢や通学学校などの家族構成の詳細を求めることも、均等法の趣旨に違反します。どうしても気になる場合は全員に追加資料を依頼するしかありません。
結論:追加情報がほしければ全員に依頼する
契約更新時の妊娠は更新しなければ違反
通院・休暇申請制度を周知する
 中小規模の大学に勤務していた男性教員の部長(65歳)は、女性教員が妊娠したのを機会に「妊娠しているから次回の契約更新はできない」と伝えました。もちろん、妊娠を理由に解雇・不利益な取扱いは均等法違反となります。契約更新をしないことは不利益な取扱いにあたります。正社員だけでなく派遣社員、アルバイト・パートの雇用形態の人に対しても同じです。
 その上、この大学には、妊婦健診のため定期的に病院に通うための通院休暇制度がなく、部長は、つわりがひどい場合も休むことを認めずに叱ってばかりいました。それが周りに広がり職場全体で休めない雰囲気を作っていました。妊婦が体力的にも気分的にも落ち込んでいるときに契約を打ち切られたのです。
 しかし、均等法では、妊婦が健診を受けるための時間を確保するように義務づけており、つわりのための休業ができます。しばらくして、女性は労働局などに相談、大学は雇用管理を指導され是正を促されました。部長は、女性教員が少なかったため、その対応を知らなかったのです。妊婦のためのマニュアルや制度もありませんでした。部長は、ただ通院休暇・休業の申請、または主治医に記入してもらった「母性健康管理指導事項連絡カード」を提出する事務的な作業だけをしていたのです。
結論:妊婦労働者のためのマニュアルを徹底する
女性上司の言葉がきついと感じている部下もいる
男女の脳の特徴を知っておく
 均等法が施行された時期に入社した50歳代前半の女性たちの中には、その影響もあり、仕事一筋で係長・部長などに昇進した例もあります。そんな女性上司は言葉がきついと感じている男性部下の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 米国の言語学者デボラ・タネン氏によると、男性脳のほうが直接的、女性脳は間接的表現な回答の仕方をする傾向にあります。本来、男性脳は、情報を正確に伝えることに重点をあてるため、直接的、ストレートな無駄のない表現になり、女性は、上下関係や人間関係を重視するため相手の立場や気持ちを考えるため間接的でまわりくどい表現になりがちです。
 女性は、女性脳だから、一般的に間接的表現をすることが多いでしょう。しかし、仕事でミスを犯した部下を叱るときにはそんなことまで考える余裕がなくなり、一時的に直接的表現をします。その場合、いつもと違うため、かえってきつい表現だと感じるのかもしれません。
 米ベンシルバニア大学の神経学医ラギニ・ヴァーマ氏が男女の1000人の脳をスキャンし脳構造の違いを研究した結果、男性の脳神経は前後への結合が強く、女性の脳神経は左右のへ結合が強いため男女の考え方に違いが出ることが判明しました。
 ですから、女性の脳は、相手のわずかな表情の変化も見逃さず、察する・感じる能力や臨機応変に対応することができることが分かりました。そのため、看護師や保育士、受付対応係や証券会社での窓口での対面取引、カスタマークレーム対応係などに適しています。一方、男性には表情や感情を読み取ることは難しく、じっと目を見続けるだけでストレスに感じている人も多いようです。
 女性の脳は、自分の立場だけを考えて思ったことをポンと口に出してしまったり感情が豊かなために突然泣き出したりすることもあります。しかし、これは、実は、涙を流すことで、ロイシンエンケファリンという脳内物質が分泌されパニックにならないように涙を出してコンロトールしているのです。女性の涙に対して過剰に反応したりアタフタしないことです。男女の脳のしくみ理解すれば、ストレスも減るでしょう。
結論:男女の脳の仕組みを理解すればストレスも減る