先週の「派遣社員は正社員になれない?」のコラムに対して、派遣という立場の苦しさを訴えるメールやお手紙をたくさんいただきました。
前回述べたとおり、改正労働者派遣法では、3年以上働き続けている派遣スタッフを無視して、同じ部署・職種で新たに正社員を雇用することはできないことになっています。ところが企業は法律の間隙を突いて、まず別の部署で採用し、しばらくしてから派遣スタッフの部署に異動させているというのです。これは法律の精神を踏みにじるもので、企業倫理に照らして許されるものではありません。
また前々回の「専ら派遣」についても、怒りのはがきをいただきました。就職先が決まらずに困っている大学生に、大手企業が「うちの会社で働くことができる。それには子会社の派遣会社から派遣されてきてください。いつか正社員になれるかもしれないから」と誘います。就職試験に落ちて落胆している学生は、いわれるがまま。こんな企業にとって都合の良い新卒の“お試し採用”がまかり通っていいのでしょうか。しかも苦しい業界では、ここ数年正社員を採用していません。誘いの言葉とは裏腹に、正社員にするつもりはないかもしれないのです。
しかし、法整備を進めるよう働きかけたり、企業の欺瞞(ぎまん)を告発したりという一方で、現実に何とかしなければという面もあります。一つにはキャリアを磨いて新天地を目指すことですが、もし本当にその会社で正社員を目指したいなら…。
実際に私が勤めていた会社では、45歳の女性が派遣歴3年あまりで正社員になりました。確かに彼女は仕事の能力もありましたし、どちらが正社員か分からないくらいよく働いていました。しかも「一つ言えば十わかる」「かゆいところに手が届く」人でした。
法整備の遅れや企業のずるさを超えて、本当に自分を磨いている人は報われるという一例ですね。