退職金を資本金に。退職金の税金も払えない?
 60歳の定年を待たずに退社した里原茂さん(59歳)は、3年前までN総合研究所に勤務していた。
 自分よりも5歳も年下の人が上司になったことで、『もう自分の存在はないものと同然』、虚しくなって会社に通勤するのが苦痛になった。
 「退職金は2000万円もらえたが、そのまま会社設立の資本金として登録してしまった。税金が差し引かれることも計算してなかった。自宅のローンも払い終えてないから女房に怒られてばかりだ」
 そりゃそうだ。年下の上司を見返してやるとばかりに会社設立を奮起、退社後よく調べもせずに、すぐに会社設立の準備をした。
 
里原さんの小遣い 3万5000円のうち本代がランチ代より高い。
 里原さんの趣味は読書。古本屋にいっては比較的新しい本を買ってきて読みふけている。
 「多くの若者がもっと読書をするようになれば日本も変わる!。それが俺の夢だ」と言い切る。
 北方謙三の本はすべて読んだ。最近は横山秀夫の「半落ち」など泣ける本が好きだという。
 ランチは毎日同じ弁当でもいいから本は毎日違うもの読みたいというから驚く。
 会社には数万冊の本が在庫となって並んでいる。
 現在約8割の会社が退職金と一時金と併用した『退職一時金』として支払っている。
 里原さんもそうだった。それは「退職所得」という所得税の区分になり、他の所得とは分けて所得税を計算する「分離課税方式」になる。他の所得と合算した場合よりも税金額が低く抑えられるしくみになっている。
 退職所得は、勤務年数に応じて退職所得控除が適用されるが、里原さんの場合は30年勤務だから1500万円が控除額になり、それを引いた金額の2分の1に税金がかかる。退職金に対しての支払わなければいけない所得税額はたった約25万円だった。プラス住民税13.5万円が余計にかかった。
 「相当、控除された方からたいした金額じゃない。だけど、銀座に事務所借りて秘書を雇って、DMを前の会社に数万部送ったり大量に商品を仕入れてしまった。会社を設立すると予想以上に余計なお金が飛んでいったんだ。口座にも資金がないといけないから」
 事情内容はアマゾンドットコムの小型版。家にあった大量の本から思いついたそうだ。
 しかし、奥さんは、夫の会社も長くは持たないだろうと危機感を感じ昨年から働きだした。
 里原さんはラッキーな方だ。2007年の団塊の世代の700万人の退職者向けに一時金を準備できない企業も増える。これからは会社設立のための資本金も当てにはできなくなる。
読書が好きな里原さんの小遣い帳

     
  月額 35,000
ランチ代 12,000
本代 17,000
食事代 6,000
  小計 35,000