中国スポーツ事情
 スポーツメーカーの争い①

 「人」が走っている姿をデザインしたロゴマークは、「建(nong(にんべんに「農」の簡体字)体育 JIAN NONG SPORTS)という現地メーカーのもので、米ナイキや独アディダスと並ぶ人気のブランドです。
 古くから各国の大使館が集中している北京市のオフィス街、朝陽区にあるスポーツ店に足を運んでみると、古いビルの1階には(建(nong(にんべんに「農」の簡体字)体育 JIAN NONG SPORTS)など10店舗ほどのスポーツ店が中国独特の看板とともに並んでいます。
 小庸(生活に余裕がでてきた人)が増え、北京五輪の広告によりスポーツへ憧れる人が増えたためでしょう。若者の間では急激にスポーツに関心を持つ人が増加しています。売り場には学生を中心に流行を先取りしようと真剣な表情で選んでいます。
 「本物のナイキは買えないけどニセモノならシャツが160元(約2000円)ほどで買える。スポーツ用の服を着ているだけでもステイタスがあるんだから現地メーカーで十分だよ」
 米ナイキや独アディダス、日ミズノは、現地メーカーの数倍値段もするため高値の花。
 元ロス五輪男子体操金メダリストが経営する「李寧(リーニン)」に続き、「建(nong(にんべんに「農」の簡体字)体育 JIAN NONG SPORTS)、「NIKKO」や「域(口の中に冬)・VIEITU」、「OZARK(奥索克)」「COLUMBIA(康沃塞)」の現地メーカーが、中国のスポーツ市場の売り上げの8割を占めています。
 安いといってもスポーツシューズは平均で400元(約5300円)、デパートでは7000円もします。
 それでも欧米のメーカーなら、3~4倍に当たる1600元(約2万円)もするため手が出せないのです。
 もはや「中国製品は安い」といった日本人の固定観念は崩れ落ち、「高くても売れる」といったブランド戦略にともない新しい消費構造ができつつある中国、これからがスポーツの本場を迎えます。
 アメリカのスポーツ産業の規模は約15兆円、日本の場合は約6兆円、中国はまだ約1・8兆円です。
 東京オリンピック後の日本でも急激にスポーツ市場が拡大したように、中国市場は日本を超えた10兆円規模が期待されます。
 まさに、スポーツの浸透とともに、マーケットの拡大のスタート地点に立ったばかりなのです。