わが国において労働力人口が減少している中で、女性の人材活用が重要であることが再確認されている。しかしながら実際には、女性の昇進を促進する企業が増える一方で、多くの女性は昇進ができないどころか再就職することさせ困難であり、また仮に再就職先を見つけても雇用形態や条件は男性よりも格差が拡大しているのが現状である。
 実際、日本では、出産を機に6~7割の女性が退社している。子育てをおえた後、職場に復帰したい女性は95%もいるのにもかかわらず、正社員として再就職できるのは全体の1割しかいない。希望している理想の仕事内容は自分の成長が感じられる仕事は43.9%、前職のキャリアが生かせる仕事が43%となっている1)が、その条件や環境は悪化している。また、「子育てをして再就職をした場合、年収は以前の半分以下になった」と答えた女性は全体の44%であった。
 日本企業と外資企業の女性特有の職業においてフライトアテンダントを中心に、現職者のアンケートとヒアリングをもとに現状を分析し、女性特有の職業は現在の日本企業の女性の雇用問題を浮き彫りにしており、女性の雇用問題を浮き彫りにしていることが分析でした。
1.はじめに
 近年においては再び正社員の数が増加している。2006 年の労働力調査では前年比で約37 万人増の3411 万人になり10 年ぶりに増加に転じている。しかし非正社員の数は、景気が低迷した1997 年前から増加し現在では全体の3 分の1、女性に限っては5 割を占めるようにまでなった。
 格差雇用が問題になっている中で、特に女性においてはさらにその差は大きい。同時に、わが国では若年者の就業能力の低下にともない、ニート、フリーターの増加が社会問題になって久しい。団塊の世代が大量に定年退職をむかえる2007年問題、労働人口の減少により深刻な労働社会問題をかかえている中で、女性の雇用問題に対しては大きな改善策がみられているとはいえない。
 わが国の女性の年齢階級別にみた労働力率は女性が出産を機に会社を退社し子育てに時間を必要としなくなったときに職場に復帰するM字型カーブを描いている。しかし、日本の場合は退社する理由は出産だけではなく、「若さ」「容姿」「体力」などの衰えを理由に、肩たたきにあい退社を迫られる傾向も強い。その若さを強調する女性特有の職業の代表として諸外国と比べて著しく平均勤続年数が短い職種にはアナウンサーや受付、フライトアテンダントがある。
本報告は、フライトアテンダントに職業意識などのアンケートとヒアリングを実施、分析した2)。企業側、個人側にリカレント教育への意識が薄い問題点、および、諸外国とわが国では女性の雇用方法の違いが分析でした。企業側と個人側のリカレント教育の意義とあり方などについて諸外国と比較検討し今後の研究を深めたい。
2.日本女性の労働の特徴
 日本の女性の労働力率を年齢階級別に分析すると、1975年にはこのM字型カーブの底は25~34歳であったが、2004年には30~39歳が底、また近年では底がやや上がってきている。これは女性の晩婚・晩産化による子育て期年齢が遅れ、また一人の女性が子供を産む数が減ったことで子育て期間が短くなったことが考えられる。それでもM字型カーブの特徴は変化することはなく、女性が子育てのために退社して、その子育て期間が終わったら復帰するといった働き方が変わったとはいえない。
 フライトアテンダントに実施したアンケート2)でも入社時に思っていた退社するときには結婚するとき、いわゆる「寿退社」が以前に比べると減少したものの未だ根強く50%以上を占めている。「一生できる仕事ではないから退社したいが、別の仕事を見つけたら一生働き続けたい」という人が増えていた。しかし、それでも「寿退社が夢」という結果は一般的な事務系の職種についた人よりも格段に多い。事務職においては、結婚して退社するよりも妊娠して退社する人が多いが、フライトアテンダントおいては、結婚を機に退社する人が多いのが特徴である。
 それでも外国の女性は違う。米国とスウェーデンにおいては1980年代には既に逆U字カーブを示しており、英国とドイツについても2004年にはM字カーブではなくなり逆U字カーブを形成している。ILOのデータによれば15歳から64歳の女性の労働力率は、日本は1975年の49.7%に対し2004年は60.2%の上昇しているが先進各国の上昇率に比べると伸びていないことがわかる。
 実際にフライトアテンダントのアンケートによると、平均勤続年数は4 年である。現役では、最近では、日本の航空会社に関してはやや長く平均は6 年であった。いずれにしてもM字型カーブは今後も大きく変化しないことがアンケートの結果からも容易に想像できる。
3.外国人との労働意識の相違点
 同じ日本人のフライトアテンダントでも退社理由は、日本の航空会社と外資系の航空会社によって大きな違いがあった。
 欧米企業の採用には、「フライトアテンダントの職種に応募したときから一生働くつもりで勤務している」という回答が圧倒的に多く、美しさや若さが日本ほど重要視されず、むしろ機能に重点を置いている航空会社が多いためか、働く側も、他に職業がみつからない限りは続けると答えた人が多かった。
 アジアでは「出産しても育児休暇をとり復帰したい。できる限り働きたい」という回答が多かった。
4.リカレントの教育の現状と問題点
アンケートの結果、職業意識は入社6~7 年目からは変化している。リーダーとして後輩を教育する立場になると職業意識における退社を考え始める人が増えている。フライトアテンダントという接客業務からレーナー、シニアパーサーなど教育係になることで職種の変化にともない興味が失われていることが分析される。
 退職後は契約社員やフリーという立場でマナー研修の講師、英会話の先生、免税店などに販売職に転職する人が多い。パソコン入力、経理、事務などの必要性がない職業であり、転職に不利になる。それを知った上で自主的に訓練を受けている人は1割しかいなかった。個人においてもリカレント教育への関心が著しく希薄で充実していないことが分析できる。
 リカレント教育の理念は、1973 年、経済協力開発機構(OECD)の報告書「リカレント教育:生涯学習のための戦略」で広まった5)。
 スウェーデンの現在の教育理念の根本は機会均等の保障である。制度改革は1960 年代後半から具体的に始まり
  ①1968 年の地方自治体成人学校を設置し小中高学校を成人でも修得できる補償教育ができる。
  ②25 歳以上で4 年以上の労働経験者を優先する大学入学制度の導入。
  ③成人に時間、経費の面で教育を保障する1975年の制度化。
  ④成人教育義務資金法(1976 年)の施行。
  ⑤1977 年の専門的な職業教育を重視した高等教育改革によって1953年に国が負担する学生ローン制度が
    導入。
 リカレント教育の真の狙いは、学卒者の教育レベルと労働市場での要求レベルとのミスマッチ(過剰教育=学歴インフレ)、高等教育修了者がその学歴にふさわしい仕事に就いていないのは公費の無駄遣いだ、としている6)。
 転職することが精神的にも所得においてもプラスになるような社会構築がなければリカレント教育型の生涯学習社会は実現しないといえる7)。
5.企業側の採用と問題点
 フライトアテンダントは未だブランド商品の戦略として扱っている日本企業が多く専門学校まで存在しているのは日本だけである。男女雇用機会均等法により1999 年の改正により募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇において男女差をつけることが禁止され、スチュワーデスの呼び方がフライトアテンダントになり機能性も重視し始めたが、その効果は表面的なものにとどまっている。
6.結論
  雇用の流動化とともに男性の派遣社員も増加しているものの、圧倒的に女性のほうが多く、若さと美貌を重要視されている女性特有の職業といわれているフライトアテンダントを中心に調査したが、多くの日本企業の一般事務職としての採用においても生涯働くことを見込んで女性を採用している企業は少ない。
また、日本におけるキャリア開発やキャリアシフトは多くの場合成功しているとはいえず、個々の職業能力の再開発や、自己理解への努力はきわめて不十分であり、またそれを支援する企業や国の取り組みも不十分であることがわかった。
 リカレント教育の実効性をあげるためには、各産業において本格的な調査を実施し、その職業において不足しているスキルや能力を開発する施設をつくるなど需要にマッチしたプログラムを開発する必要がある。また各職業を分類ごとにわけ各企業ごとにキャリア形成とともにリカレント教育を義務付けることも必要である。


1)リクルート「未就学児をもつ専業主婦の再就職意向調査」2007 年2 月実施
2)2006 年3 月から1 年間、日本航空、全日空、キャセイパシフィック航空、シンガポール航空、ベトナム航空、ユナイテッド航空のフライトアテンダント115 人にアンケート実施、ヒアリングは33 人に実施した。
3)2007 年1 月から7月末までの期間、フリーアナウンサー50 人にヒアリング実施
4)20 代(25-29 歳まで22 人)、30 代前半(30-34 歳まで20 人)
5)CERI/OECD(1972)Recurrent Education: A Strategy for Lifelong Leaning, Paris の邦訳の文部省大臣官房教育調査第88 集『リカレント教育』1974 年
6)森岡幸二・杉浦克己・八木紀一郎『21 世紀の経済社会を構想する』桜井書店、2001年
7)同上書、166-167 ページ
8)木下武男『日本人の賃金』平凡社、1999 年