金融危機克服と世界経済安定に向けた金融サミットが行動計画を打ち出しましたが、効果が出るには時間がかかりそうです。米国の10月失業率は前月より0・4ポイント上昇して6・5%と、94年3月以来最悪になりました。
一方、日本でも総務省の労働力調査では、9月の完全失業率は4・0%と前月比で0・2ポイント上昇しています。女性は前月比、前年同月比とも変わりませんが、男性は上昇。特に55~64歳では完全失業者数、完全失業率ともに前年同月に比べ悪化しています。不景気になると年齢が高い人=給料が高い人がリストラのターゲットになるのは避けられないようです。
地方に講演に行くと中高年層の方が「大手メーカーの工場が2カ月間稼働ストップすることが決まった。地域経済はさらに悪化し、雇用の減少も避けられない」「メーカーに工場設備を提供していたわれわれの会社の業績は前年比7割減」など、都市部よりも深刻な声が聞かれました。
彼らの悲観ぶりは深刻そのものでした。「今後、米国経済の回復には10年かかる。輸出依存型の大手製造業から仕事をもらっている私の会社は、もう倒産するしかない」というのです。
10月以降の失業率はさらに悪化するかもしれません。でも、失業率がもっと悪化している米国より日本の方が、悲観ぶりが深刻なように思えます。国内には内需型企業、ブランド輸入型企業、経済情勢に大きく影響されない介護ビジネスなどの業種もあります。バブル崩壊時にも、それまでと違う円高のメリットを生かした商品を取り入れるなど、いち早く発想の転換をした企業が成功しています。
個人に言い換えればこれまでの価値観をすべて捨て、次の10年に必要とされる人になるよう方向転換するのです。悲観する前にぜひもう一度、自分の価値の大切さ、大事な仕事の内容を見つめ直すことが大事です。
(生活経済ジャーナリスト・嘉悦大学短期大学部准教授)