大学新卒予定者の内定取り消しは、このままいくと1000人以上に上るともいわれます。
金融危機の影響がここまで響くとは、と思う方も多いのではないでしょうか? 何しろ大学生が就職活動を始めた昨年の6月までは、半分近くの学生の内定が決まっていました。1人の学生が何社からも内定をもらったり、ある企業の内定を断って別の企業を受けてたりする学生もいたほどでした。私が紹介して内定をもらったのに断った学生に対しては、厳しくしかり、二度と紹介しませんでした。
警視庁の警察官募集に対しては、内定者のなんと半分近くが、自ら辞退して民間企業へ流れていったといいます。
それが金融危機の影響によって夏以降、その学生たちが就職試験・面接を10社受けても一向に内定がもらえなくなり、毎月1社受けていた学生が、2~3カ月に1社しか受けられなくなりました。一転して企業側の採用の延期や中止が続き、学生はただ待機するのみ…。
警視庁警察官の次の採用試験の問い合わせは、まだ少ないようです。過去には不景気になれば公務員の人気が高まりました。学生へのアンケート結果でも「リストラは避けたい」「倒産はいや」という理由から、公務員という職業は人気があります。でも「自分が本当に興味のある職業は何か」と追求していく力は養われておらず、公務員だけでなく民間企業についても業務分析ができていない学生が少なくないようです。
悲しいかな「内定」は企業側と学生の駆け引きに使われているのが現状で、信頼関係のためでなくなっています。
公務員人気はこれから一層激化するかもしれませんが、採用を取り消された学生を呼び込もうと動いている中小企業や人材ビジネス会社もあるようです。挫折しても業界分析をしっかり行い、可能性のある企業に再チャレンジする-。不況の時だからこそ大切です。
(生活経済ジャーナリスト・嘉悦大学短期大学部准教授)